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岩下俊作の同名小説が原作。
明治〜大正の小倉を舞台に、豪快な車夫・松五郎と、軍人の未亡人との交流を描いている。
稲垣浩監督が1943年に一度映画化しているものの、検閲によって場面カットされたため、戦後になって自身の手でリメイクした作品。
主演の三船敏郎は松五郎の実直で豪快な様をこれでもかと表現。
"無法"と呼ばれる狼藉は序盤の小屋での大立ち回りくらいに思うけれど、そことその後の手打ちの場面だけで十分に松五郎の人物像がつかめる。
乱暴者とは違う、憎めない豪快なキャラクターですね。
身分違いの恋を自覚して、無私で未亡人とその息子の敏雄に接する姿には感じ入るところがある。
終盤、未亡人に自分の気持ちを言い表す際でも、たまらず大尉の遺影のもとに向かい、次にいう言葉が「俺の心は汚い!」とは…。
身分差の悲劇とは思わないけれど、この、ある日本人の心根のまっすぐさが美しく切ない。
松五郎の最期はそれまでの出来事が走馬灯として流れるのだけど、それが人力車の車輪とオーバーラップしていて、そして最後には車輪が止まる。
つまりそこで松五郎の人生が止まったということだけど、そこまでにも劇中で散々車輪の回転が挿入されるので、この意図はかなりわかりやすい。
というか今観ると車輪の挿入は少々くどい感じかなあ?
まあ場面転換の意味もあったわけだから、無用とは思わないけど。
場面転換と言えば、回想シーンに入る際などのワイプは、なかなか手作り感があって面白い。
ところで、中盤の松五郎が敏雄の凧糸をほぐすシーンで、背景で待たされた人力車の客が怒りをあらわにジェスチャーするシーンがあるんだけど、ここだけ無声映画の喜劇のノリで妙に可笑しい。
松五郎が戻ると何事もなかったかのように座り…なんだろうこれはw
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