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小豆島を舞台に、戦中戦後の時代を生きた小学校の女教師と、その生徒たちの姿を描いたドラマ。
壺井栄の同名小説を木下恵介監督が映画化。
生徒たちに愛情を注ぐという、教師のあるべき姿を見せる序盤。
すでにベテラン女優の高峰秀子が演じた初々しい大石先生の姿には、非常に好感が持てる。
だけど生徒の家の貧乏という現実や、近づく戦争の影というその時代に翻弄されていく様がもどかしい…。
終戦から10年経たない内に制作された作品だけに、もちろん演者たちもそれぞれにあの時代に対する想いを背負ってたろう。
戦場の場面はないけど、そういった戦争の不条理さや、それに対する怒りといった想いがひしひしと伝わってくる作品だった。
特に、アカのレッテルを恐れて言いたいことが言えない、または言わないように強要されるという描写が、そういう抑圧された空気感の象徴として恐ろしい。
それに対する高峰秀子の内心から憤った感じも良いね。
そりゃあ大石先生なら、教師としてそんな世の中を受け入れはしないだろう。
作品全体としては、時代の移り変わりの見せ方が的確で分かりやすい。
子供たちも小学校1年から6年、そして大人へと成長していくのだけど、よく似た子役を使っているので上手いことスライドしてくね。
さすがに小1の子役の演技が上手いとはお世辞にも言えはしないけど、それでも雰囲気という点でのこだわりが生きてますな。
人間の良心を描いた普遍的な作品だとは思うけど、ほんの10年前にあった戦争という、不幸な時代に向き合った"その時代に作られたからこそ"という作品でもあると思う。
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