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樋口一葉の短編小説、「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」を原作にした3編からなるオムニバス映画。
嫁ぎ先での仕打ちに耐えきれずに実家に戻ってきた女、資産家の家に奉公している女、銘酒屋の遊女。
それぞれ異なる立場の3人の主人公だが、それぞれが明治時代の女性の姿として、文芸的な情緒を見事に表現しつつ映像化されている。
個人的には特に2編目の「大つごもり」が良かった。
30分あまりの短編だけれどテンポ良く進行するし、なにより主人公が伯父の借金の助けにと、とうとう切羽詰って奉公先の金に手を付けてしまうまでの過程や心情がすごく伝わってきたかな。
窃盗という行為は悪事だが主人公の胸中には同情するし、ついにバレてしまう!というギリギリのサスペンス感まであるという展開の上手さ。
それにしても金が入っている箱に対して気持ちが行っている表現として、カメラがそこに寄っていくという演出は今観ても見事な効果です。
話の展開としてはどれもテンポ良く構成されているのだけれど、状況説明は各話の冒頭で登場人物の口を借りてかなり説明台詞が出てくる。
ギリギリわざとらしくはないが、でも説明台詞と分かるそれは原作が小説であることの雰囲気を残しているようにも。
まあそこが文芸作品らしさなところでもあるとは思うが。
それにしてもどれもが女性的な視点での情緒が現れているし、舞台となった明治という時代が切り取られたかのような空気感は素晴らしいね。
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