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ある海底の異変から日本が海底に沈むという危機が現実のものとなり、究極の対応を迫られた首相や科学者達の苦悩を描くSFパニック映画。
日本が沈むということ自体は近い将来を考えれば荒唐無稽と思えることだけれど、その上でそれが起こった場合を想像して作り上げた社会派なテーマやストーリーは見応えがあった。
そう、大地震や洪水のスペクタクルに目が行きがちだけど、“日本という祖国を失ってしまう日本民族としてのアイデンティティー”について問うた作品なんだろうと思う。
つまり、日本人はユダヤ人になれるのか?、と。
祖国滅亡の危機に際し、一人でも多くの国民を休出しようと奔走する首相。
時の為政者としての苦悩を余すことなく表現する丹波哲郎は実に良かったね。
特に東京が大火に見舞われ、避難場所を求めて皇居に殺到する市民の報を聞いた首相が、宮内庁長官に宮城の門を開くよう命令するシーン。
そして、三人の学者が提案したという「何もしない方が良い」という付帯的な案を聞いた時の首相の目がすごく印象に残る。
そう言う意味では、田所博士の粗暴さにも感じるところがあるね。
“日本が沈む”と言う事象の第一発見者となってしまった苦悩は如何ばかりか。
結局最後には沈んでしまうところが当時の終末的な社会の雰囲気も感じさせるけど、それでもラストシーンでどこかの国の列車に乗っている主人公達をみると、少しの希望は見えるかな。
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