シネつう!
JAPAN STYLE !!

人間の條件
第一部 純愛篇/第二部 激怒篇
1959年制作

満足度:

昭和18年の満州で、現地工人の労働環境の改善という理想を抱いて鉱山の労務管理に着任した主人公。彼がその理想と現実の壁にぶつかっていく姿を描く。五味川純平の同名小説の映画化作品(全六部構成の第一部と第二部)。

五族協和というお題目を立てながらも、満州国において日本人が現地人に対して行った差別的な行為。
現地人を工人として過酷な重労働を強いたことも、その支配者的意識からくる行為だったけど、そんな中で一人“本物のヒューマニスト”として現地人のために待遇改善のために努力した主人公。
彼が日本人の良心として世の中を変えていく…わけではないところがこの映画の重く深い意味のある作品にしている。

横暴や不正と戦う努力をしても、助けようとした特殊工人(中国人捕虜)からは“日本人である”ことを理由に信用されず、あまつさえ逃亡を図られ、さらに守ることが難しくなってしまうというジレンマ。
「彼らのために努力しているのになぜ信用してくれないのか」という主人公の想いに、「日本人は嘘つきだからだ」と工人に一括りで語られてしまう主人公の憤りが、否応なしに伝わってきて辛い。
どれだけ立派な理想を持って実行しようとしても、日本人という自分の存在自体がそれの壁になり、さらに個人の力ではどうにもならない大きな権力によって潰される。

人が人の道を生きられない時代の悲劇として、考えさせられるものがあったね。
これは主人公が口先だけのヒューマニストではなく、本当に信念を持って立ち向かおうとする人物であるからこそ共感し、ともに苦悩するところか。
だからこそ、第二部の工人7人の処刑の場面で、意を決して憲兵に立ちふさがった時、周りにいた多くの工人がそれを後押しするかのように声を上げたシーンが数少ない救いのシーンとして胸に迫ってくるのです。

主演は仲代達矢。
信念を目に宿す演技が素晴らしいけど、当時27歳(デビュー5年目)なのか…すごい。
中国人役のキャストはすべて日本人なので、中国語はあやしいけど、ちゃんと中国語は中国語として描いているところはリアリティ重視。
第二部では工人・王を演じる宮口精二が見事な存在感で主人公を諭す。
名シーンですね。

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