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昭和18年の満州で、ついに関東軍へ召集された主人公・梶。彼が日々の厳しい訓練や、古参兵からの理不尽な扱いに耐えながら軍隊生活を送る姿を描く。五味川純平の同名小説の映画化作品(全六部構成の第三部と第四部)。
反戦思想の持ち主である主人公が軍隊組織に組み込まれ、体力や銃剣術の面で秀でいているというのは皮肉。
軍隊内の生活は古参兵からの陰湿ないじめなど生々しく、理不尽さに憤ってしまうけれど、それでも梶は自身の信念に従って彼なりの静かな抵抗をするわけで。
その姿には脱帽するが、抗うには軍隊という統制の組織は大きすぎるか…。
梶が昇進した後、彼が受けた仕打ちを後輩には繰り返さすまいとする彼の行動には感銘もした。
しかしこの組織にあって、それだけではどうにもならないところも出てくるのだけれど。
迫りくるソ連軍との戦闘は圧巻。
ミニチュアなどの特殊撮影なしで、本物の戦車(偽装してソ連軍戦車に見立てたM4)を使い、至近距離でガンガン爆破をかける映像は半世紀前の作品としても十二分な迫力がある。
塹壕に飛び込んだ梶の真上を戦車が通過していくシーンも本当にやっているんだよね…。
ソ連軍の戦車部隊に対して、歩兵と榴弾で防衛線を張る日本軍との戦力差はよく出ている。
壊滅し、古参兵の一人はシェルショックで発狂し…、生々しい。
梶は敵からの発見を恐れてその発狂した古参兵を手にかけてしまうけれど、ヒューマニストとして誰よりも他人を大事にしてきた梶のショックたるや。
「鬼になっても生き残る」というラストのセリフは、第二部ラストの「日本鬼子」と罵られた場面と対になっているのかな。
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