ソ連軍との戦闘に敗れ、敗残兵となった梶は満州の荒野・密林を彷徨い、ついにソ連軍の捕虜となってしまう。
五味川純平の同名小説の映画化作品（全六部構成の第五部と第六部）。

食料もほとんどなく、絶望的な状態で彷徨い続ける第五部。
他の敗残兵や日本人避難民と行動を共にすることになり、梶はリーダーシップを発揮して南満を目指すけれど、やはり残酷な現実は何も待ってくれない。
飢えの中で民間人はほとんど倒れ、中国人民兵にも襲撃されて民間人最後の一人も殺されてしまう。
それだけでも残酷さに観ていて憤りを覚えるが、終盤には日本兵の桐原伍長による少女への暴行には参る。

ソ連軍の捕虜となる第六部では、日本軍の階級を利用した捕虜の強制労働の指揮系統によって、上等兵の梶は再び理不尽な待遇を受ける。
特に桐原伍長は酷い（演じた金子信雄は見事な憎まれ役っぷり）。
キレた梶による私刑で殺される桐原の姿には溜飲が下がる思いではあるけれど、何もかももう手遅れか…。

この映画（第一部から第六部）を通して、この映画はそういった戦争の時代の理不尽を見事に描き切っていたと思う。
全上映時間９時間半を通して、戦争末期の満州における日本人の道程を（まだまだ実際はこれ以上のもであったろうけども）追体験した思いを抱かせてくれる。
結果的に悲劇であったし、あの時代にあってヒューマニズムを通そうとした梶にはこの運命しかなかったのかもしれないのかな…。

それでも最後まで諦めず、人間性を否定する巨大な存在（組織・時代・そして他者）に立ち向かった一人の男として語られるべき主人公像だったろう。
梶役の仲代達矢は確かに第一部から第六部を経て顔つきが変わった。
逆境によって人間がどのように変わっていくかを体現していたと思う。

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