シネつう!
JAPAN STYLE !!

64-ロクヨン-
後編
2016年制作

満足度:

横山秀夫の同名小説を佐藤浩市主演で実写化したミステリー・ドラマの後編。
警察庁長官による視察日が目前に迫る中、昭和64年に発生した未解決の少女誘拐殺人事件の模倣事件が発生する。

原作は未読。
前編は佐藤浩市演じる三上を中心にした警察広報官という業界モノの様な部分が強かったけれど、後編は前編でバラ撒かれた伏線を回収しつつ、刑事ドラマらしい警察・被害者・犯人の想いが交錯していくドラマになっていたね。
それでいて警察という組織論の部分よりも、「子を持つ親」という三上・雨宮・目崎という三者に共通した部分がちゃんと話の軸になっているので、人間ドラマとしても入り込みやすい。
ストーリー的に初見だった自分としては、冒頭での電話ボックスにいる雨宮の姿の意味が、模倣誘拐事件や他の伏線と繋がっていく流れとして良くできた構成だと感心した次第。

ただ展開上は広報官の立場であそこまで現場に乗り込んでいくものなのか…という部分で、多少のご都合主義というか力技だなあという印象も。
観客の代理として三上に現場を目撃させるという意味では、必要な流れだけどね。
そう追い込むためなのか、あからさまに二課長が頼りないのはちょっとワザとらしく感じてしまったw

展開の速度的に前後編で趣が異なる感じはする。
そもそも組織の中で板挟みにあう三上の姿が中心だった前編と、進行中の事件と過去の事件が繋がるドラマが見どころのこの後編では趣が違うのも当然だけど、個人的には組織や職業人としてぶつかり合う感じの前編の方が見応えを感じたかも。
後編のドラマも良いとは思うんだけど、展開の妙はあれどあくまで“刑事ドラマ”という枠に納まってしまった感じが強い。
ラストの三上と目崎の一騎打ちなんてまさに刑事ドラマとして取ってつけた様な感じだけど…。
でも、映像作品としてはやっぱりそうしてピークを持ってくるというのも分かる。
(空撮(ドローン撮影?)で二人の姿を追うカットは印象的。)

3者の物語として佐藤浩市演じる三上、永瀬正敏演じる雨宮、そして後半からの登場となる緒形直人演じる目崎の演技巧者たちの演技のぶつかり合いはとてもいい。
目崎の表情が変化する部分なんて良い意味で本当に“芸”だよなあ、さすが。
幸田を演じた吉岡秀隆もキーパーソンの一人だけれど、展開上かなりしんどそうな演技をしている場面があって、なんだか笑えてきてしまった。
非常にシリアスな状況の場面なので笑ってしまうのは申し訳ないんだけど、でもヘリウムが切れたからって、必死で声色を変えている苦しそうな様子がどうにも可笑しくてw
「ひょっとしてこのシーンはギャグなのか…?」と思いながら観てしまったけど、きっと違う。
シリアスな場面なのだ、すみません…。
(この映画でギャグのつもりなのは、視察取りやめ決定後の赤間のワンカットと、事件解決後の二課長のシーンくらいだろう。)

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