シネつう!
JAPAN STYLE !!

レッドタートル
ある島の物語
2016年制作

満足度:

スタジオジブリがフランスと共同製作したマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督のアニメーション作品。
嵐の海を漂い、無人島に漂着した男。
筏を作って脱出を試みるが上手くいかない。

ウミガメが何の象徴であるのか。
鑑賞後しばらく考えてみたけど、明確な考えとして纏まらない。

一義的には“自然”か“海”の象徴かと思う。
しかし劇中で主人公に殴り殺された(様に見えた)ウミガメは、女性となって主人公の前に現れるのである。
そして子をなし、主人公が死ぬまで添い遂げ、最後には海に帰って行った。
こうなると明確な「何か」ではなく、生命の繋がりや情念といった観念的なものなのだろうかと…。
分からない。
分からないが、ただもっと何か大きな…神性なものすら感じる漠然とした何か。
明確には言えないのだけれど、ウミガメはこの作品全体の入れ物なのかもしれない。

正直言うと中盤まではそうした技巧の部分に気が行ってしまっていたのだけど、終盤になって年老いてきた男の姿を見た時に、不思議と込み上げてくるものがあったんだよね。
人生が終わる、そんな予感を感じたのかもしれない。
たった80分の作品の中で、命のつながりの中にいた男にすっかり感情移入してしまっていたのだろう。

そういう意味で、鑑賞後には主人公さながらにとても不思議な体験をしたような感覚に陥った。
台詞も排除され、ただ絵と音の中で描かれる生命の物語。
人間は自然の中で生きているし、自然から与えられ、奪われ、その中で生命を全うしている“存在”だという事の表現。
そういった観念に訴えるアニメーションとしての芸術性は抜群だと思う。


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