シネつう!
JAPAN STYLE !!

聯合艦隊司令長官
山本五十六
2011年制作

満足度:

1939年から1943年にかけて、当時の大日本帝国がいかに米国との戦争へ向かったかを、対米不戦論者だった山本五十六の姿を通して描く戦争伝記映画。

この時期に起きた日独伊三国同盟、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ガダルカナル撤退から、山本長官が戦死したブーゲンビル島までを一気に描くので、かなり駆け足で事態が進んでいく感じは受ける。
なので状況についていくには、ある程度この時代の歴史や世界情勢を知らないとしんどい?
それでもあえて馬鹿丁寧な解説描写は控え(人物名のテロップすらない)、その時代の一個人として山本五十六にフォーカスした作りには好感が持てます。

人情味やユーモアがあり、楽観論を否定し、理性的に戦局を理解していた山本五十六という人物像は、この映画ではややもすると好意的に描かれて過ぎているかもしれない。
けれど、対米不戦論者でありながら対米戦の責任者に任ぜられた運命の皮肉を感じさせるには、このくらい感情移入しやすい人物に描かれている方が良いというのは思うところ。
当時の世論を作ったマスコミや初戦の勝利に浮かれる市井の人達もわりと型にハメた描き方だったし、あくまで山本五十六を通して当時の日本が歩んだ道を描くドラマとしては、そういう意味で構造の単純化に成功していると思う。

対して、常に表情が硬く、山本五十六よりも軍令部総長の永野修身の意に従う南雲忠一は、人間としては多少複雑さを抱えた人物の様に見えたし、実は一番ドラマチックな場面を用意されたのが南雲中将だったかもしれない。
ミッドウェー海戦後に見せた涙のシーンは、ある意味でこの映画のクライマックスだったなあ。

あくまで人間ドラマであるので、尺のほとんどは後方にいる山本五十六の周辺での会話劇で進む。
軍事会議であったり、新聞記者との会話であったり、たまに帰った家族との時間であったり。
なので戦闘シーンについてはポイントを押さえる程度にしか描かれないのだけど、その描写については模型やCGでの再現度がかなり良く、臨場感は抜群。
「このクオリティで、これだけしか見せないのはもったいないな」とは思いつつも、作品の内容を考えれば必要十分な描写と感じるので、そういう部分でも作り手が話の何に重きを置くかが分かっているように思えて良かった。


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