シネつう!
JAPAN STYLE !!

連合艦隊
1981年制作

満足度:

日独伊三国同盟締結から戦艦大和沈没までの帝国海軍・連合艦隊の興亡を、2つの家族の運命と絡めて描いた戦争ドラマ。

マクロ的な戦史の描き方と、ミクロ的な家族のドラマが混在となっているけれど、戦争に翻弄された家族の悲劇的側面を強調している印象。
1940年から1945年にかけての海軍の戦史映画としてはかなりのダイジェスト感が強いけど、見応えはあったかな。
ただ、海軍内にあっては当初より軍令部と連合艦隊司令部との対立が表面化していて、それが様々な作戦の成否を分ける原因だったという否定的な描写が多い。
この辺は戦後の日本における戦争史観がよく出ていて興味深いね。

映画の序盤は連合艦隊を取り巻く状況が中心で、海軍内の場面では山本五十六(小林桂樹)が先行きを不安視しながらも真珠湾攻撃の決意を新たにする有名なエピソードも描かれる。
この辺は他の作品でも幾度となく描かれた話だけど、全体的は掴みの部分なのでよく知られた話を入れたって感じなのだろうか?
それと並行して本郷兄弟や小田切親子の話も描かれるけど、戦史映画的な期待もあったので、このあたりでは家族の話がイマイチ浮き気味に感じてしまった。

小田切親子の息子を演じるのは本作がデビュー作の中井貴一。
さすがに若いが、デビュー作という事もあってか、本郷兄弟や小田切親子の中では出番は少な目。
でも小田切の親父を演じた財津一郎との感じは良いね。

真珠湾攻撃からミッドウェーまでは駆け足な印象。
真珠湾攻撃は「トラトラトラ!」の特撮を使いまわしてたかな。
とはいえ終盤の戦艦大和の特撮などはかなり力の入ったもので、良くできていた。
ラストの爆発の大迫力よ…。

余談だけどこの映画の特撮で使われた戦艦大和の模型(1/20スケール)は、実物を船の科学館で見たことがあるのだけど…デカかった。
残念ながら今はもう解体・廃棄されたそうですが。

中盤まではやたらと空母の瑞鶴が話の中心になるなと思ったけど、正規空母で最後まで残った幸運艦だからドラマの中心になったんだなと、この辺で理解。
レイテ沖海戦が中盤の山場だが、瑞鶴を失ってまで囮作戦を成功させた小沢治三郎(丹波哲郎)の一方で、栗田艦隊の成功直前での反転エピソードは観ていて憤ってしまった。
この辺は史実をかなり脚色しているようだけど、海軍内の軋轢による弊害を象徴的に表しているのでテーマの演出としては正しいかとは思う。
まあただ、栗田健男が一方的に悪役にされているきらいもあるので、まあその辺は理解したうえで観たいけれどね。

終盤は戦艦大和の沖縄特攻作戦こと、菊水作戦が話の中心。
海軍内の軋轢はここに至って末期的で、一方それまでにばら撒かれていた本郷兄弟や小田切親子の家族ドラマが話の中心に収束し始めてくるし、監督が戦争の何を伝えたいのかはよく分かる。
出征した本郷兄弟や小田切親子は次々に戦死だもんなあ。
本郷弟なんて、一度は瑞鶴沈没でも助かった命を大和で失うのだから…。
そういう意味では監督の想いがよく出ているとは思うけど、それが少々強めなので、ストイックな戦史ものとしての部分とのバランスがちょっと気になったりもする。


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