シネつう!
JAPAN STYLE !!

利休にたずねよ
2013年制作

満足度:

山本兼一の同名小説の映画化作品。
千利休の美の原点を、彼の人生を通して描く。

主人公は千利休だけど、物語の主観は妻の宗恩だろうか。
利休の追い求めた美と執念と、その儚さを考えれば、宗恩は最後に遺品の香合を壊した方が…とも思ったのだけど、そうはしなかった。
話は利休切腹の日からの回想という形で遡り、21年前から順にキーとなる出来事が描かれていく。
それがいささか駆け足な感じ…というか時代がポンポン飛ぶとこがその原因だろうけど、断片的に思えるのがちょっと微妙かな。
その21年間、懐にずっと大事に持っていた香合の由来が明かされる終盤への前振りではあるけども。
そこがもう少しじっくりしていないと。

終盤は日本に売られた高麗女との悲恋が描かれ、急にメロドラマに。
そこまでに描かれた利休の美の感覚、木槿の花や狭い茶室などの原点が明かされるわけだけれど、創作とはいえ侘び寂びの原点が少々俗っぽい感じに見えてしまうのは複雑。
惚れた女を心に持ち続けたと言えば聞こえはいいのかもしれないけど、一期一会どころか引きずりまくっていて俺には合わない感覚だった。

画面的には良いんだけどね。
所作や腹に秘めた雰囲気を演じる市川海老蔵はハマり役だと思う。
この映画のこの話であれば、海老蔵の二枚目過ぎる利休像もありだろう。
でも個人的には「へうげもの」で描かれたような、心の奥底まで黒くて深い求道者としての利休像が面白いと思う人間なので、この映画は今一つ入り込めなかったかな。

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