シネつう!
JAPAN STYLE !!

老人Z
1991年制作

満足度:

老人介護のボランティアを行っている看護学生の晴子だったが、ある日、担当の高沢老人が介護ベッドのモニターに選ばれたことで担当から外れてしまう。
しかしその後、晴子のPCに助けを求める謎の通信が…。

「老人介護問題」+「SF」という組み合わせがユニークで、高齢化社会を予見したテーマの普遍性は公開後四半世紀経った今でも古びていない。
「機械に繋がれて生かされる老人は幸せなのか…?」
序盤こそそういった社会派的な問題提起をしつつ、次第に介護用ベッドが暴走して最後は軍事ロボットとまで戦うメチャクチャな展開に発展していくわけだが、こういう日常からの地続きな部分からの話の飛躍がSFとして面白いよね。
いろんなものを取り込んで巨大化する介護ベッドのデザインは秀逸だし、よくこんなの思いつくもんだと思うが、機械なのに有機的な感じで成長していく感じの生々しさなんかは作画だからこその魅力だろうなあ。
TOTOやSONYが実名で登場しているのもリアルさの一助にもなっているが、劇中でスヌーピーがもろに描かれているのが気になったりもする。
もしかしてこの辺は勝手に使ってる可能性もある…?w

大友克洋の脚本は展開がハイテンポで全くダレない。
主人公・晴子の老人介護に対する思い入れの理由を第三者の会話に紛れ込ませたり、説明台詞の不自然さを隠している感じも好みです。
まあ、晴子は江口寿史のデザインがキャラの魅力の大部分を支えている気はするんだけど、とにかく行動力がありすぎる彼女の(個人的には真っすぐすぎて共感しにくい部分もありつつ)話を動かすエネルギーについては説得力があると思う。

脇役も魅力のあるキャラがいて、凄腕ハッカーのじいさん(ハッカーとじいさんというミスマッチが良い)や、厚生省の役人・寺田とかいい味出してます。
特に寺田は、序盤はいかにも役人的なイヤな大人の代表としての役回りなのに、話が進むごとに「大人」としての魅力がどんどん増してくる。
寺田は寺田なりに老人問題の事を考えているし、自分の責任というものも自覚しているのだろう。
終盤、押しつぶされそうな車体の中でも高沢老人を庇っている姿を見た時には、もうすっかり応援しちゃいますよねw
寺田が吠える「厚生省をナメるなよ!!」という決め台詞が、中盤と終盤ですっかり印象が違うものになってしまうのは面白い構造だと思う。

本作の尺は80分程度の短いものだけど、ハイテンポな展開は終盤まで変わらない。
大破した介護ベッドの疑似人格・高沢ハル(「2001年宇宙の旅」の"HAL"に引っ掛けてるんかな)の、「すぐにまたお会いてきますから…ね…」という高沢老人への「天国でまた…」的なミスリードからの斜め上を行くオチには参ったw
ほんとこれは何度観ても笑ってしまいますわ。


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