シネつう!
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るろうに剣心
最終章 The Beginning
2021年制作

満足度:

週刊少年ジャンプで連載された同名漫画の実写化作品。
幕末の京都、緋村剣心が人斬り抜刀斎だった時代の出会いと別れを描く。

最終章2部作の公開順としてはまず先に「The Final」が公開され、本作の「The Beginning」はその6週間後に公開。
そういう意味では、観客側は緋村剣心が「不殺の剣を貫いた先でついに手にした居場所」を目にした後に、「不殺を誓うに至る前の話」を見ることになる構成ですね。
それはそれで前日譚としてはありだし、本作のラストがシリーズの1作目に直接つながるようにしたのも悪くはない。
この話がなければ「るろうに剣心」は完成しないというのも事実だしね。
もったいなかったのは、終盤で人斬り時代の志々雄を出さなかったところだな。
エンディングの鳥羽伏見の合戦場面は1作目を流用してシリーズを循環させたのだから、志々雄も藤原竜也の素顔で出しておけば「京都大火編」にもつながったのに。

でも本作の一番の問題はドラマの核心が「あの剣心が過去に妻を惨殺していた!?」という出来事の真相なのに、すでにそれを前作の「The Final」でダイジェストとして見せてしまっていることだと思う。
これじゃファスト映画でネタバレされた後に本編を観させられている様なもんじゃないかとすら感じてしまったな。
もし「The Final」のダイジェストで触れられなかった秘密がそこにあるのだったらこれでも良かったかもしれないけど、そういうわけでもないというところが気になる。
それなら「The Final」では剣心の語りだけで済ますくらい割り切った方が観客の興味も惹いて良かったかもしれない。

本作は原作にもあった回想エピソードを基にしたというよりは、それを基に作られたOVAの「追憶編」がベースなので孫受けの様な立ち位置だろうか。
確かに印象に残るやり取りや終盤の展開は、原作よりもOVA版の影響がハッキリと出ているかな。
OVA版は“少年マンガ”の雰囲気から“時代劇”に軸足を移したような演出でとてもいい出来栄えだったけど、本作もアクションエンタメ的なノリが強いこれまでの雰囲気から時代劇ドラマ風に変えている感じ。
でもドラマという意味では、OVA版(各話30分の4話構成)よりも長い尺を取っておきながらも感情面での積み上げ方などが物足りない印象ですね。
飛天御剣流の「時代の苦難から弱き人々を守ること」という理と「新時代のためとしながらも言われるがままに暗殺を繰り返す現実」との狭間で削られる心を描くなら、もっとロボットのように日々暗殺を繰り返す描写はほしかった。
それがあれば後半で巴との束の間の「人としての生活」で剣心が変わっていくところが映えたろうし、その変化とともに巴の心が寄っていくところももっと映えたろう。

ちなみに元治元年(1864年)の時点で剣心は15歳の設定のはずだけど、若い剣心も引き続き佐藤健が演じているので俳優の実年齢(2020年時点で31歳)とはだいぶ差が出てしまった。
ホントのこと言うと巴は剣心の3歳上の設定だけど、演じる有村架純は佐藤健の3歳下だし、原作やOVAにあった年の差の雰囲気が逆転してしまうのは如何ともし難いなあ…と実写版の(いろいろな都合の)難しさを実感するところでもある。

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