シネつう!
JAPAN STYLE !!

11・25自決の日
三島由紀夫と若者たち
2012年制作

満足度:

1960年代後半。
自衛隊に体験入隊した三島由紀夫は民族派の学生とともに民兵組織・楯の会を結成する。
三島は左翼の騒乱に乗じて、治安出動した自衛隊とともにクーデターを画策するが実現せず、1970年11月25日に命を懸けた最後の作戦を決行する。

三島由紀夫が自衛隊基地で総監を人質に取り、決起を促した演説を行った後に割腹自決を遂げた「三島事件」を描いた作品だけど、“劇映画”というよりは全編“再現VTR”の様な雰囲気が付きまとい、いまいち盛り上がらない。
低予算映画であることが映像面で不利に働いているのは致し方ない部分もあるとは思うものの、どうにも演出が淡白な感じだなあ。
ドラマにするならば三島が事件を起こすに至った思想の根源や、森田が三島に心酔した動機などに深く踏み込んでほしいところだけど、そういうわけでもないし。
悪く言えばどこかで見聞きしたようなエピソードの羅列になってしまっていて、そういうところが“再現VTR”に見えてしまう要因かな。

エピソードの羅列だからなのか場面転換した後の状況がたまに飛び飛びに感じる場面も。
楯の会初代学生長だった持丸が楯の会脱退する話なんて、流れの中で唐突もいいところ(持丸の存在はもはや人間というより記号のような扱い)だし、三島夫人役の寺島しのぶも劇中に必要だったのか分からないくらいに存在が浮いてる。
セリフが台本のセリフに聞こえてしまうのは脚本の問題だろうか。
ドラマっぽい筋立てにはなっているものの、そこに人間の感情が描かれているのかはあまり伝わってこないというか。
要するに…、何というか…、若松監督は感情じゃなくて出来事を撮りたかっただけなんだろうか?なんて思ってしまう。
なにかすごく作り手と話の間に距離を感じるんだよな。
同じく史実を扱った「実録・連合赤軍」の様な監督の執念が、申し訳ないけどこの作品からは伝わらなかったのです。

主演の井浦新(三島由紀夫役)と助演の満島真之介(森田必勝)は気迫を感じる部分もあるけれど、こういう見せ方の中では何かもったいないという印象だけが残った。


もどる(サ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01