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伊藤計劃・円城塔の同名小説のを原作にしたアニメ映画。
架空の19世紀を舞台に、屍体を動かし労役に就かす屍者技術を巡る攻防を描いたスチーム・パンクSF。
この映画を観た時点で原作は序盤までしか読めていないのだけど、導入部の展開や設定は原作とちょっと違う。
映画の尺に入れ込むための工夫だと思うけれど、そう思うと全編にわたって話に詰め込むための苦労が垣間見える。
世界を股にかけて舞台が移動していく話でもあるけど移動の間の話はほとんど描かれないし、どちらかというとその場所ごとにイベントをこなしていくような感じもあって、映画単品のはずなのに何となくダイジェスト感の漂う作品かな。
おそらく色々な登場人物の色々な思惑が入り乱れているので、この尺で描くには情報が多いということもあるのだろう。
そういう意味でその話の整理に苦労が感じられるし、逆にTVシリーズなどで時間をかけて観たいなあ…と思う部分もある。
元々この原作自体、伊藤計劃が生前に書いた草稿30枚を基に円城塔が話を膨らませた小説であるわけで、それであれば映画は映画でその草稿を基にオリジナルの展開にしたって構わないだろう。
中盤以降がどれくらい原作の流れを汲んでいるのかは分からないけど、個人的にはダイジェスト風味になるならもっと流れや登場人物を絞っても良いのかもは思った。
特に日本の場面はなぜ日本でないといけないのか分からないくらいには浮いていたし…。
とか言いながら、一方でこの作品の魅力は有名な架空のキャラクターを多く取り入れた作風(「リーグ・オブ・レジェンド」の様な感じ)であるわけで、ならば「八十日間世界一周」も言及こそされないけれどもしかして風味としては入っているのかもしれない。
それなら日本に寄るのも仕方はないかな?
話としては前述のように詰め込んだ感はあるけど、画の方は映画らしくクオリティが高くていい。
中盤などは意外にアクション要素も含まれていたけど、よく動いていて見応えがった。
背景についても“生者のモブは作画、屍者のモブはCG”と決めて作ってあるらしいけど、そういう細かいところも効いている感じ。
屍者については一般的な感覚からするとやはり忌避感があるけど、気持ち悪くない程度にゾンビ的な感じでバランスは良いか。
主人公が固執するかつての親友であった屍者フライデーは、それら他の屍体に比べるとかなり綺麗な感じで特別性と思えるけど、この辺は主人公の主観もあるのだろうかなどと思ったり。
それにしても次々と登場する有名キャラたちだが、原作未読だったおかげでエピローグはニヤニヤしてしまった。
ハダリーという名前は(ワザとだが)捻りが無さ過ぎて「ガイノイドでしょ?」とすぐに分かっていたのだけど、まさかラストにそう来るとは。
実はエンドクレジットに超有名キャラの名前があったものの「どこに出てたっけ?」と記憶がなく、その後のエピローグで登場してワトソン博士ってそういうことか、と思わせた後にハダリーのそれだ。
惜しむらくは、もう少しそれを匂わせる前振りがあれば…だけど、これでもニヤついてしまったのでいいやw
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