シネつう!
JAPAN STYLE !!

ジョーカー・ゲーム
2014年制作

満足度:

柳広司の同名小説を原作にしたスパイ映画。
陸軍での訓練中に上官を殺してしまった主人公は、処刑寸前のところでスパイ組織・D機関を指揮する結城中佐に組織への参加を持ち掛けられる。

原作は未読だけど、2016年のアニメ版は鑑賞済み。
それと比べるとアニメ版の「陸軍中野学校」的な…硬派というかハードボイルドな感じよりも、本作はもっとエンターテイメント志向で作られていて、どちらかというと「007」といったスパイ映画の方を向いているんだろうな、と思った。
(火薬を使った導火線のシーンなんて、露骨に変拍子の劇判を流したりなんかして「ミッション:インポッシブル」へのオマージュなんだろうけど…あざとい。)
だから派手なアクションも多く、主人公も冷徹になり切らないし、ボンドガール…じゃないな峰不二子みたいな立ち位置の“無頼の女スパイ”まで出てくるのだろう。
正直アニメ版を観て「面白い」と思った要素はだいぶ減っていたとはいえ、単純に娯楽映画を目指した結果そういう雰囲気になったのならば、良かれ悪しかれまあこれはこれでという感じではある。

オリジナルは主人公を変えながらの短編エピソードで構成されているので、映画では一人の主人公を軸にして一つのストーリーに変更している。
スパイの世界に入っていく主人公が最初から(感情に正直なところ以外は)スパイの素質全開なのがご都合的だけど、まあだからこそ展開はすこぶる早い。
「今降りた階段は何段だった」「広げた地図の下には何があった」という質問のやり取りは、「スパイの観察力はすごいな」と直感的に観客へ伝える常套手段とはいえ、その辺も序盤の世界観の説明として効果的な感じだね。

大きくはその序盤の主人公の訓練、そして新型爆弾の製造法を記した極秘書類・ブラックノートの争奪戦があり、その裏では結城中佐が陸軍の弱みを握るための暗躍を…という流れ。
ブラックノートの中身が非現実的だという事にしても結城中佐はそもそも知っていたという話なので、結果としてすべての事象は結城中佐の掌の中での出来事だった…というのが本来このD機関の物語の面白いところだと思うんだけど、その辺がちょっと弱くなったかも?
そういう部分が、情に弱かったりハニートラップに引っかかったりという主人公のうかつなところで打ち消されちゃってるんだよね。
あとスリーパーの話にしても伏線の張り方次第ではもっと面白く見せられそうだったのに、“実はこんな説明があった”だけいきなり出てくると驚きは半減。
ネタ晴らしにならない程度にスリーパーの存在をにおわせる描き方はアニメ版の方がうまかったと思う。
個人的には主人公のアクションよりも、結城中佐の権謀術数や見えない暗躍をもっと楽しみたかった気がするのです。

ところで予告では変装時の早変わりが見どころの一つの様に見せていたけど、劇中では追跡側に見える位置でそれをやってるもんだからまるで逃走に生かせていないのが何とも…(苦笑)

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