シネつう!
JAPAN STYLE !!

JUNK HEAD
2021年制作

満足度:

不老不死と引き換えに生殖機能を失った人類は、1600年前に反乱を起こし今では地下に住む人工生命体「マリガン」の生殖能力の調査のため、主人公パートンを地下へと送り込む。
3部作を予定している長編ストップモーション・アニメーションの第1作目。

不死となった人類と相対的な存在(本作の場合はマリガン)のいる設定というのはSFではありがちではあるけど、工業的でやや終末的な感じの地下空間が生み出す空気や、(生殖能力をキーワードにしているためか)いかにも男根をイメージさせる生き物が闊歩していたりといった、その独特な雰囲気にはすごく引き込まれた。
同じく男根をモチーフにしている“エイリアン”を連想するものもあるけど、こちらは恐ろしさよりはどこか(キモいけど)愛嬌を感じてしまうのが不思議。
生死の際どい世界の割にシリアスになりすぎないコミック的な演出も親しみやすさに貢献しているのかもしれないけど、そういったノリの部分とデザイン的なキモさとのギャップが上手い塩梅でコントロールされているのがいいね。
弐瓶勉の漫画が好きなら受け入れやすいかもしれないと思う。

主人公は調査のために地下に訪れたわけだけど、いきなり記憶と体をなくして目にするものすべてに戸惑う状態に。
そこは観客と同じ目線で話に入るための仕掛けで、現実では考えられないような世界観にもかかわらず、説明的なセリフを最小限にしても入り込める話にしてあるのだから、これは筋立ては上手いということなのだろう。
何度か姿の変わる主人公ではあるけど、基本的に造形物の顔なので表情が作れないキャラクターでもある。
それでも感情が伝わってくるのは演技や演出のセンスが良いからだよね。
ストップモーションという無機質な連続写真に、主人公の優しさという感情が確かに宿っていた。

登場人物が皆キャラが立っているのもいい。
特に三バカ兄弟は、作っている側の愛着も感じられるような魅力があるなあ。
それこそコメディリリーフ的な存在ではあるけど、キメるところはキメるし、ベタだとしても散りざまは格好良かったよ…。
個人的には、この作品が感動を前面にするよりもちょっとコミック的な笑いのエッセンスの方を前に出しているところに魅力を感じているのかもしれない。


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