シネつう!
JAPAN STYLE !!

ジョゼと虎と魚たち
2003年制作

満足度:

田辺聖子の同名短編小説を原作にした犬童一心監督の実写作品。
大学生の恒夫はある日、あまり外の世界を知らない足の不自由な少女“ジョゼ”と出会う。

原作は未読。
公開当時に登場人物と同じくらいの年齢だったけれど、自分は友人から「君向きの映画じゃないで」と聞いたまま、結局観ずに幾歳月。
おっさんになった今初めて観たわけですが、まあ…友人が俺に向かってそういったのは分からなくもない。
当時(今も少々)恋愛映画は守備範囲外だったし、ベッドシーンの主張が強いのも好みではないし、そういう意味では友人も俺のことをよく分かっていらっしゃるw

まあそれはともかくとして、映画としては主人公の青春時代の終わりに突き刺さったトゲの様な出来事をよく描けているのではないかと思った。
健常者と障碍者という対比的な設定がより印象深いものにしているけれど、結局は主人公のある種の弱さを描いているわけで、「ジョゼを見守る」ことに自分の存在理由を見出そうとした自分、それでも最後にはその重さから逃げてしまった自分、という二段構えで主人公の逃避を描いている様に感じる。
ラストの主人公の涙はそんな自分の弱さに対するものだろうか
確かに恒夫はジョゼを愛していたのかもしれないが、最後の最後で強い人間ではなかった。
ジョゼと出会ったのが大学4回生というモラトリアムの終わるころで、ジョゼと別れたのが社会人1〜2年目の頃。
まさに青春の終わりに訪れた出会いと別れですな。

ジョゼは世界のことを本でしか知らない。
だから外を知る恒夫に何か惹かれたのだろうかね。
気だるげな喋り方が印象的なジョゼだけれど、祖母に「こわれもの」として扱われてきた時間が作り上げた心の壁の表現としては分かりやすい。
その壁から外の世界に連れ出した恒夫への気持ちと裏腹に、最後にはまた壁の中(海の底)に帰ることになるのだろうという予感しているのは切ないですな。
ホテルでの語りは少々直截な表現な気はするものの、ジョゼの抱える闇のようなものはよく伝わる。
ジョゼにとってもこれは青春時代のトゲになったかもしれないけれど、恒夫とは対比的に、外の世界に触れた彼女はこれから強く生きるのだろうと感じさせるラストが印象的。

設定的には舞台は関西地方という事で、(地方から出てきた)恒夫以外の登場人物はほぼ関西弁。
配役にネイティブ関西弁の役者が多いので台詞の方言感は安心感はあるけど、街並みは…なんか関西っぽくないのが個人的にはちょっと気になったり。
まあそこは中身の本質じゃないのでいいんですがねw


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