シネつう!
JAPAN STYLE !!

ジョゼと虎と魚たち
2020年制作

満足度:

田辺聖子の同名短編小説を原作にしたアニメーション作品。
大学生の恒夫はある日、あまり外の世界を知らない足の不自由な少女“ジョゼ”と出会う。

原作は未読。
2003年に公開された犬童一心監督の実写版は観たことがあるのでどうしてもそれと比較してしまうが、青春時代の終わりに突き刺さったトゲの様な作品だった実写版とは違い、本作は青春の光が主人公たちを照らすような清々しい作品だった。
同じ原作から生まれても別物の物語を志向して制作されていることは結末から一目瞭然だけど、こうも前向きに大団円を迎えると実写版を観たことがある身としては正直「なんだかアクの抜けたような、とてもキレイな話だ」という感想も脳裏をよぎる。

でもだからといってこの作品がダメだというわけではない。
ビターエンドに向かった実写版とは違う世界線というか、これはハッピエンドを迎えたマルチバースの世界なのだ。
実写版は役者の肉体があるからこその生々しさがあのビターエンドな物語に妙なリアリティを与えていたけれど、本作はアニメだからこそ出来る嫌味のなさに全フリして青春の光を描いている作品なのだと思う。
というかこの恒夫とジョゼの関係なら、ずっと幸せで、真っすぐであってほしいと思ってしまうような描き方なんだもの。

障碍と自立の話はこの物語から外すことはできないが、この恒夫の様子からはジョゼに対する意識に対して障碍が何かの壁になっているようには感じられなかったのが良かった。
“管理人”と呼ばれはするが、行動の管理人というだけで「保護者」でも「介護者」でもないというか、ひょんな事で行動を共にするようになってしまった面が強調されているような気がする。
そういうところは2020年になってバリアフリーの進んだ時代という意識の変化も感じられて少々興味深いかな。

ところで本作は大阪が舞台ということで、建物やら駅やら見知った景色がたくさん出てきて個人的に面白かった。
割と身近なローカル線が登場するあたりとかも、話と関係ないところでついニヤついてしまうw


もどる(サ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01