8
人の精神状態から"犯罪係数"を測定し、管理するシビュラシステムを導入した未来社会を描いたアニメシリーズの劇場版。
全3エピソードを3回に分けて公開した3作目。
TVシリーズ1期で復讐を果たし、日本国外に逃亡し放浪の旅を続けていた元執行官の狡噛慎也。
その放浪先となるチベット・ヒマラヤ同盟王国が舞台なので、もちろんシビュラシステムもドミネーターも出てこない。
「じゃあ全然『PSYCHO-PASS』っぽくないやん」という考えも最初は脳裏をよぎらなくはなかった。
でも「PSYCHO-PASS」という作品で描かれた“狡噛の復讐”というテーマについて、彼の心の中での決着する話と考えると、本作がシリーズの一区切りとして重要なエピローグであるとも感じる。
(新シリーズへのプロローグとも取れるが。)
「日本へ帰ろう。」
その言葉を前向きに本人の気持ちとして言わせたことが、本作の位置づけとしてはとても重要だよね。
狡噛と現地の少女・テンジンとの交流を繋ぐ“復讐”というキーワード、そしてそのドラマを補強するのは菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」。
本作の筋立ては割とわかりやすく、善人風なゲストキャラに裏の顔があるなど起承転結の持って行き方はかなりベタなのだけれど、そこを「恩讐の彼方に」のプロットを絡めて二つの復讐の果てを構築しているところはなかなか上手かった。
狡噛はテンジンの復讐に自分のそれを重ね、テンジンは「恩讐の彼方に」に自分のそれを重ねる。
狡噛自身が復讐の果てに得たものと失ったものの重さは「一度殺したら前の自分には戻れない」という言葉に表れているが、彼が言うとホントに説得力あるよなあ。
そんなドラマを1時間強でやり切ってしまうテンポの良さが素晴らしいです。
前作「Case.2」でちょっとだけ登場した外務省の花城フレデリカは本作では大きい役だったね。
外務省の裏仕事担当っぽいので前作では割と胡散臭い人物なのかと思っていたけど、本作で狡噛のパートナーポジションとしてここまで活躍するとはw
色仕掛けは使わない不二子ちゃんって感じもしたけど、なかなかクールで良いキャラですなあ。
何にせよ、TVシリーズ1期が終わってから6年。
復讐という過去に囚われて放浪し続けていた狡噛が、ついに未来に向けて前に歩き出したことが感慨深い。
もどる(サ行)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01