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ドラえもんの出会いと別れを通じて成長するのび太の姿を描いた3DCGアニメーション作品。
原作のエピソード7編を繋げているのだけれど、元々原作は短編の集まりなわけだし、ただ繋げただけでは断片的な羅列になりかねない。
でもこの作品は、のび太としずかが結婚するという目標に向かう本筋の背後で、のび太がドラえもんから精神的自立をするというテーマをちゃんと組み込めていて、1本の話としても違和感がない。
正直、上手く構成したもんだと感心した。
3DCGの表現もタイムマシンの亜空間や、タケコプターでの飛行が実にダイナミックで効果的。
リアルな背景の中にマンガ的な頭身のキャラがいることに、最初は違和感を感じつつも…そこはすぐに慣れた。
元々乗り気でないドラえもんに対して、セワシが「成し遂げプログラム」を使って強制的にのび太の世話をさせる部分はオリジナルで、原作とはだいぶ違う。
これは元の「さようならドラえもん」では曖昧だった強制的な帰還についての分かりやすい理由になっていると思う。
それに、最初は嫌々感があるのでのび太に呆れていたドラえもんが、最後には離れたくないという気持ちを振り切らざるをえない哀しさとして、効果を発揮しているよね。
まあ原作のまま曖昧でも支障はなかっただろうけど、短時間の映画でより効果的に感情を見せるには良い仕掛けだったかなと。
「さようならドラえもん」「のび太の結婚前夜」なんかは劇場アニメにもなっている話だし、観客を泣かしにかかっているのは見え見え。
自分としては「その手に乗るかい」と斜に構えて観ていたけど、ダメだね。
特に「さようならドラえもん」はダメだ、原作でもアニメでも本作でも恥ずかしながら涙腺が決壊してしまうw
でも本作ではもう一つ、思わず落涙してしまう場面があった。
未来に来たのび太に、青年のび太がドラえもんに会うかと尋ねられたシーンで、青年のび太は魅かれながらも会おうとしなかったところ。
それはいつか来る別れの暗示であるとともに、のび太がどこかの時点でドラえもんから精神的自立を果たしたということの表現だろう。
個人的には「さようならドラえもん」でこの映画は終わっても良かったのだと思うし、テーマ的にはその方がキレイだったかなあ?
でも映画は「帰ってきたドラえもん」で終わる。
少年のび太にとって"そばにいてほしい"と思える親友・ドラえもん。
別れはいつか来る。
でもまだ、今ではない。
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