シネつう!
JAPAN STYLE !!

SCOOP!
2016年制作

満足度:

原田眞人監督のTV映画「盗写 1/250秒」を原作にして、大根仁監督が福山雅治主演でリメイクしたドラマ。

やり手の中年パパラッチとド素人の新人記者という凸凹コンビのバディムービーだが、反発的な感じから次第にいいコンビになっていく過程がテンポ良く描かれていて上手い。
冒頭のクローズアップからワンカットで一気に空撮まで持っていく勢いが気持ちいいし、登場人物の過去を感じさせるやり取りも“説明”ではなくて空気というか…雰囲気で感じさせてくれる部分が良いね。
やはり人間関係の切り取り方が適切だから、そういう風に楽しめるんだろう。
多くは語られないけれど、主役の静と定子の過去、静とチャラ源の過去、静と馬場の過去…。
回想に頼らない見せ方が好みです。

登場するキャラクターはどれも濃い。
主演の福山雅治は静のヤサグレた感じでもやっぱり福山雅治だとは思うけど、面倒見の良い一匹狼という感じがなんか良いね。
ストーリーとしては二階堂ふみが演じる野火とのコンビの関係がメインなので彼女も良いのだけど、個人的には定子を演じる吉田羊が特に良かったなあ。
仕事仲間、元コンビ、昔の女、そして最大の理解者という存在。
もちろんチャラ源を演じたリリー・フランキーの強烈さも、馬場を演じた滝藤賢一も良かった。

こういう現実的な舞台でこそ邦画の役者は生きるんだよな、とつくづく感じた次第。
そういえば劇中で取り上げられるスクープ写真はフィクションだけど、あれはどのゴシップの事だな…とモデルの出来事が推測できるのでちょっとニヤついてしまう。
一方、実際の事件では123便墜落事件やオウム事件、和歌山(ヒ素カレー)事件のこともチョロっと台詞で出てきて、現実との地続き感がさり気なく。
そんなところもいいね。

さて終盤だけど…、静は自分の情報屋だったチャラ源に射殺される。
カメラマンがそんな風に被写体になるのは果たして本望と言えるものなんだろうか…。
そんなことを考える一方、その決定的瞬間を野火に撮らせるという行為がそこまでに静が野火に行ってきたOJTの究極の仕上げ…バトンタッチだと考えると、これは“受け継いでいくこと”を語った映画なんだなあと感じた次第。
実際この映画自体が「盗写 1/250秒」のリメイクなわけだし、大根監督自身が「17歳の時に観た『盗写 1/250秒』へのリスペクト」だと言っているのだから、その時に観た邦画の面白さを受け継いでいこうという想いの結晶でもあったのかもね。

静の死の瞬間の写真を掲載するか否か、編集室で侃々諤々やっている場面は、昔に彼とコンビを組んだ定子と馬場の彼に対するそれぞれの想いがぶつかり合って非常に熱い。
「人間・静に対して」か、「カメラマン・静に対して」なのか、どちらの想いも分かるだけにね。
基本的にスター映画・エンタテイメント映画だけど、主演退場後にこういう風な熱量があるやりとりが出来るのはやはり話のバックボーンがしっかりしているからだろうな、と感じた。

全体的にストーリーの山谷がしっかりしていて面白いよね。
出会いと反発、コンビとしての危機から理解へ、困難なミッションと成功、そして最後の事件からのビターエンド。
スター映画だし、安直な映画ならミッション成功でちゃんちゃんと終わるくらいの勢いだったかもしれないけれども、でも最後の事件が原作への最大のリスペクトなのだから監督もそこを避けようとはしないか。
正直言うと、静がキャパへの憧れを語りだした瞬間に、俺としては「これって死亡フラグなんじゃない…?」と思ったんだけどねw
でもこの展開は良いと思うんですよ。


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