シネつう!
JAPAN STYLE !!

四月は君の嘘
2016年制作

満足度:

TVアニメ版は観たけれど原作は未読。
とはいえアニメでも7〜8時間かけて描いた内容を2時間に纏めているのだから、それと比べてしまうと内容の厚みで分が悪いのは確か。
主人公の再生の物語という印象が強かったストーリーも、映画では主人公とヒロインの関係性に主軸がスライドしているのでちょっと印象が違うかな。

メインストーリーや設定を変えずに枝葉を落として縮めている感じが強いので、最も根が深いはずの主人公の「ピアノが弾けない」という問題をあっさり克服したように見えてしまうのがどうも勿体ない。
彼のトラウマとしての母の存在は、序盤はピアノ演奏、後半はヒロインの病気と重なることでずっと影を落としているはず。
だけど、話の主軸が表面的にはヒロインとの関係性にシフトしたせいで、いわゆる難病モノ的な恋の話の方が強調されてるように見えてしまった。
そうであるために、宮園かをりというヒロインは「主人公の人生の一時の中で、突然現れて突然去って行った彼を救った存在」よりも、「自分の運命を知り、残された時間を精一杯生き、ひときわ輝いた存在」に見えるのだと思う。

とここまで書いておいてなんだけれど、個人的にはそれでも別にいいかなとも。
原作を構成するいくつかの要素の中で描きたいことがそれだったのだとすればそれでいいし、2時間映画として纏めるならこうするしかないよなあ、という感じなので。
ただ主人公の幼馴染の恋心など、かなり簡略化されてしまっているのを見ると、その辺の物足りなさはどうしようもないけどね。

登場人物は高2の設定だけど、演じる役者はちょっと上。
と言ってもこれは邦画ではよくあることなので気にはしない。
キャラクター性も上手く出ていたと思うけど、さすがに演奏部分での天才性を演じるのはなかなか大変そうなようにも見えた。
手元を隠せるピアノはともかく、バイオリンはなかなか動きをごまかせないしなあ。
とはいえ嘘っぱちにも見えない様に、ちゃんと演奏している感じが出ていたのは良かったかな。

一方でそのキャラクター性をそのまま落とし込もうとしたこともあって、序盤のヒロインのテンションはとても漫画っぽい。
いや漫画っぽく強烈でないと、最後の手紙が生きてこないのでこの描き方で正しいと思うのだけど、リアルというよりはやっぱり漫画から抜け出たようなヒロイン像だと思った。
「じゃあ、実写化ってなんなんだ」という疑問が脳裏をよぎるのだけれど、ここでそれに深入りしても答えは出ない気もする。


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