秘密結社SHOCKERから抜けたバッタオーグの本郷猛。
彼は同じく組織から抜けた緑川ルリ子を守り、組織の打倒を目指す。
庵野秀明監督が再構築した仮面ライダー１号の物語。

庵野監督は幸せな人だと思う。
「エヴァンゲリオン」で苦しみに苦しみ抜いたとはいえ、その後「ゴジラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」という監督の血肉を作った作品を自分の解釈で作ることができたのだから。
しかし彼のすごいのは、それぞれの作品での単なるゲスト監督に収まるのではなく、シリーズを横断した「シン」という概念を作り出した事がすごいのだと思う。
「シン」＝「庵野作品」という概念。
言ってみれば「庵野監督の思い描く〇〇なのだからこれで正解なのだろう」という概念だね。

本作は脚本参加だけだった「シン・ウルトラマン」とは違って庵野監督の監督作品なので、そりゃあ思いのこもったストーリーと画作りなのだろう。
しかし個人的にはそれを十分に受け止められたのかというと、そこまではいかなかった感じかな。
特にストーリーは、序盤のテンポは良く感じたものの…中盤以降は感情面でやや置いてけぼりを食う部分もあったかもしれない。
ルリ子を守るんだという本郷猛の想いの強さとか、ルリ子とハチオーグ（ヒロミ）の関係性などは、言葉の上では理解できても感情が追いつく前に話が進んでしまった感もあった。
哀しみを力に変える１号ライダーの姿に感じるはずの感動に自分が追いつくことができなかったのは残念だったな。

アクションシーンでジャンプが挟まれば舞台がパッと変わるのはある意味でお約束。
そういうところは往年のTV版を想起させるね。
ネタ枠のサソリオーグがやられたシーン（声のみ）は笑ったが、このあたりのテンポはアニメ演出っぽい印象。
１号ライダーvs２号ライダーではCGアクションがてんこ盛りだったけど、コウモリオーグにしてもCG部分は明らかにCGに見えてしまう出来栄えだったのがちょっともったいない気はした。（ワザとなのかなあ？）
あーでも正面から飛んでくるライダーキックのスピード感は良かったですよ。

全体的に人物を撮る画角のこだわりをすごく感じる作品ではあった。
演者では一文字隼人の柄本佑が飄々としたキャラクターでいい感じだったな。
政府の男を演じる竹野内豊はもはや「シン」シリーズのメタ的なネタ枠になってしまっている感じだけど、ラストで一文字隼人に「名を名乗らないやつは信用できない」と言われて返したやり取りにはニヤリとさせられましたｗ

というわけで、本作を楽しめたかというと正直…半々といったところかもしれない。
それでも「庵野監督の思い描く仮面ライダー」を観られたという意味では良いものを観せてもらった気もする。
結局のところ、自分の観たいものは「仮面ライダー」よりも「庵野監督がどう料理するのか」という部分だったのだろう。

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