シネつう!
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ソロモンの偽証
前篇・事件
2015年制作

満足度:

宮部みゆきの同名小説を原作にしたミステリー映画の前編。
1990年のクリスマスに、中学校校舎裏で発見された少年の死体。
学校と警察は自殺と判断したが、ある日、匿名の告発状が学校関係者に届く。

前篇ということで、発端となる事件の発覚から校内裁判の段取りがされていくまでの話で、まさにこれからというところで話が終わるのは仕方がない。
告発状の投函者は最初から観客側にオープンなので、何故それを行ったかというところは「恨みによって罪を被せているだけなのか?」と思わせる流れだったり、色々思索できる幅もあって引き込まれた。
そして話の中心は死んだ少年・柏木卓也の同級生たちで、真剣に事件に向き合う姿が描かれるわけだけど、演じる役者が役に合わせたリアル中学生なのも良いね。
年齢的にムリがあるようなアイドルを入れたりしないところに、制作者側の本気でこの話を物語を主役として作ろうという気概を感じる。
というかそれが当たり前の様な気もするけど。

さて、ミステリー映画らしく様々な推測の材料がばら撒かれていくが、風呂敷を閉じる前の段階なので答え合わせはできない。
個人的には何故校内裁判が成立するのかという流れの方に興味が行ったけど、強引だとは思うものの筋書きは上手くできていると思った。
事件に対する学校側の対応やマスコミの取り上げ方に反感を持たせつつ、主人公たちの自主性に共感できるように持っていく展開で、裁判が行われることに対する無関心や反発もちゃんと描かれているし。
最も法的に根拠のない裁判にどれだけの意味があるのかという冷めた気分がないわけでもないけど、事なかれ主義的な大人の体質に対する子供たちの反発という熱量にはあてられるか。
そういう意味では憎まれ役の安藤玉恵や木下ほうかが良い感じにニクくて上手いw

ストーリーの中心人物である藤野涼子の決意に大きく影響を与えた柏木の「偽善者」という言葉が印象的。
劇中でノイローゼにしか見えない森内先生が言う“呪い”という表現の様に、死してなお残るその存在感は、どこか「機動警察パトレイバー」の帆場暎一を思い起こさせる。
全て仕組まれてたりして…?

何にせよ前篇ラストも気になる引きだったし、後篇を観たいと思わするには十分な出来栄えの作品でした。


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