シネつう!
JAPAN STYLE !!

サバイバルファミリー
2017年制作

満足度:

突如電気のなくなった東京で、サバイバル能力のない一家がサバイバルをしながら鹿児島へ向かう姿を描いたコメディ・ドラマ。

「もし電気がなくなったら」というシチュエーションコメディの類だと思うけど、矢口史靖監督の作品だと聞いて想像するコメディにしては大人しめ。
というかそんな事態を考えたこともない一家が、その時どうするかというシミュレーションに近い感じかな。
確かに生水飲んで下痢になるとか、川に流されてカツラだけ見つかるとか…そういう部分に監督らしい笑いが散見されるものの、大部分は状況に困惑している様子を描いているだけ。
そこに何を見出すかだけど…。
監督の「人間よ、自然に還れ」というメッセージが強すぎて個人的にはあまり好きではないし、そもそも災害シミュレーションにしては大味な印象。

電力喪失という状況を作り出した原因は、「大方、太陽嵐かなんかだろう」と思って観ていたら本当にそのままの話だったわけだけれど、それにしてもインフラが何もかもマヒするというところはちょっと現実味がない。
確かに数日は映画の通りマヒするかもしれないけど、1〜2カ月経った大阪や岡山の場面でもほとんど復旧していないように見えたり、そこに至っても行政の広報があったようにすら見えないのもどうかなあ。
あったけど、描いていないだけ…かもしれないとは思うけど。

仮に「それが起きた世界」というファンタジーとして観たとしても、今度は主人公一家が無知すぎてガッカリw
まあこれは映画としてはテーマの一つなので構わないけど、これ見よがしに「電気機器に依存しすぎると、それがなくなったら無能になりますよ」と描くのはちょっと鼻につく。
東京から出ると決意するまでの様子も、登場人物のほとんどがイライラしているので観ていて楽しいわけではないし、そういう面でもコメディをやりたいわけではないんだろうなあと思った。
サバイバル感が出てくるのはトンネルを超えた河原のあたりからかな?
結局のところ、話の着地点として「田舎での自給自足で心が豊かになりました」という話にしか思えなかったので、ちょっと薄っぺらく感じてしまった次第。

劇中、唯一心が躍ったのは、SLやまぐち号が出てきたところかな。
あの登場シーンはかっこよかった…!
でもそれに乗ったまま鹿児島まで汽車で行くってのは、なんだか乱暴な話ですわ。
通常路線の新山口〜津和野ならいいけど、鹿児島までって…。
途中で何回水と石炭を補給したんだよ…というか設備があるのか?

多少の「映画のウソ」っていうのはアリだとは思うんだけどね。
でもサバイバルをしなければならないという状況に追い込む部分での設定が甘いと、色々気になってしまって本筋にあまりハマれなかったのです。

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