シネつう!
JAPAN STYLE !!

スカイ・クロラ
The Sky Crawlers
2008年制作

満足度:

恒久平和が実現した世界。
その世界では平和であることを実感するために“ショーである戦争”が行われ、歳を取ることのない子供達“キルドレ”が戦闘機で戦っていた。
そのキルドレ達の姿を描いた同名小説原作のアニメ化作品。

戦死しない限り永遠に子供であり続けるという苦しみ。
戦闘が起こらない限り、地上での緩慢な毎日の繰り返しを生き続けることになるという痛み。
“死こそ解放”というキルドレの深層にあるものは、“平和だからこそ生き続けられるんだ”という事へのカウンターとして、何かが突き刺さるような気持ちになった。

主に基地司令官のキルドレである草薙水素が抱えているその葛藤は、それまでに彼女が見てきたことの積み重ねから来ていることなんだろう。
しかしクライマックスでその事を包含しながら語る主人公のモノローグが、「そういった事を肯定的にとらえても良いじゃないか」というメッセージとしてストレートに訴えてきました。
それにしても…そのメッセージ、今までの押井作品からするとずいぶん素直に伝わるように作っているねw

メッセージは分かりやすいけど、作劇方法は相変わらずの押井テイストが良く出ている。
随所に現れるあまり説明はされない描写も色々な解釈の可能性を持たせる見せ方であるし、言葉でなく絵で説明を語られる部分も多い。
やたら台詞の分量で押してくる普段の感じではないけど、やはりこの監督は押井印の映画を作ろうとしているのが分かる。
あと、“繰り返し”というキーワードはもうずっと昔の作品から変わらないわけですが、この原作が選ばれてこの話というのも何かの因縁があるのかもね?

西尾鉄也のキャラクター造形は、線が少なく特徴的。
人形的にも見えるけど、それらの動作が妙に生々しく色っぽい場面もある。

逆に緻密なCGで作られた戦闘機“散香”とそれらが繰り広げる空戦は圧巻。
メカフェチ監督の趣味全開ですわw
でもそれだけのことはあって、これほど格好いい空戦シーンはなかなか目にしたことがないものだった。
もうちょっとそのアクションシーンも多く見ていたかったけど、全体的には少なめだったのが残念。
まあ、原作の展開に合わせるとこうなるから仕方がないか。


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