シネつう!
JAPAN STYLE !!

地獄でなぜ悪い
2013年制作

満足度:

異常な情熱の映画青年、抗争中のヤクザ、女優を目指すヤクザの娘、そして巻き込まれた青年。
ヤクザが娘主演で殴り込みを映画にするという、奇抜な園子温監督のバイオレンスコメディ。

「全力歯ぎしり Let's Go♪」と冒頭一発目のインパクトw
でもこの映画は竜頭蛇尾じゃ終わらない。
徹頭徹尾、園子温監督の映画に対する熱情で作られた、まさに映画へのラブレターって感じの作品でした。
その映画愛は、西がタランティーノなら、東は園子温!
ジャンル映画へのリスペクト共に、存分に発揮された監督の作家性が見事にフィルムに焼き付いてますよ。

監督の分身ともいえる映画バカの青年・平田(長谷川博己)の異常なテンションが目に付くけれど、それに引っ張られるかのように上がっていく終盤の興奮度たるや。
登場人物たちはみんなおかしい、でもあの討ち入り撮影を成立させてしまうプロットの力技が素晴らしい!
映画というものは虚構だけど、それをリアリズムとの狭間で成立させるウソは、映画を信じてないと撮れないと思う。
この作品にはその力があるし、それが熱量となって観る側にビシバシ伝わって来るんですわ。
もうほんとメチャクチャなんだけど、その"気"にあてられて笑いが止まらなかった。

コメディとしてはシチュエーション系の作品だろう。
登場人物も多いけど、序盤から勢いのあるカットで一気に話を運んでいく「愛のむきだし」で感じたような運びの無駄のなさが気持ちいい。
刀片手に暴れまわる二階堂ふみにしても、こういう風に女優の魅力を出すところが上手いと思う。
瞬発的な笑いの要素も的確で、國村隼の横っ飛びガンアクション、堤真一の顔芸、友近の包丁片手の割烹着は笑った。
血まみれの討ち入りは、首が飛び、手が飛び、星野源なんてラリった上に頭に刀が刺さる!
カメラをドリーしながらマシンガンをぶっ放してる情景には爆笑したなあw

そもそもヤクザ映画だけど、冒頭でのテーマ曲から始まり、深作欣二監督へのオマージュが色々と感じられる。
なんせ出てくる警察署が"深作警察"だしw
何気に銀残し風味の画も、そういう雰囲気だよね。
深作ヤクザ映画へのオマージュと血まみれの討ち入りという構成自体は、タランティーノが「キル・ビル」でやった部分と被るところはあると思う。
でも俺はこの映画のラストで、長谷川博己がフェードアウトし「カット!」がかかるその声を聞いて、「ああ『蒲田行進曲』なんだな、やっぱりこれは"映画"への愛を描いたメタなんだよ」と感動したのです。


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