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羽海野チカの同名漫画を原作とした実写版。
孤独な高校生プロ棋士の主人公が挑む将棋の世界と、周囲の人物たちとの関係を描いた人間ドラマの後編。
原作漫画は既読。
描かれるエピソードは原作からの再構成(だいたい5巻〜11巻くらい)だけど、個々に考えると駆け足な印象は強い。
ひなたへのイジメの話にしても、川本家の父親の話にしても、もっとズッシリと切実な話だったような気がするのだけど、幾分マイルドというか…やはりここは映画の尺に合わせた感じにはなっているかな。
でもそれらの出来事を通じて、主人公の桐山零は誰かを守りたいと思い、そしてまた自分も周りに支えられていたと気づいていく。
将棋しかないと思っていた孤独な少年が、人と関わることに人生の意味を見出していくドラマとしては前後編でよくまとまっていると感じたし、まだ原作が連載中にもかかわらずテーマをうまく拾って着地させたというところでも感心した。
特にオリジナルのエンディングに向かっては、幸田家に対する話の決着への持って行き方が良かったと思う。
幸田八段と香子の「勝ち筋」の会話は少しでも香子の気持ちを救えただろうか。
主人公と義弟・歩との約束の話は回想も含めて取って付けた感じがしなくもないけど、まあ話としてフォローしないわけにもいかないわなあ。
でもそれで最後に宗谷名人との対局でエンディング…というところへの繋がりには悪くない。
登場するキャラクターたちはそれぞれに何かのドラマを背負っている。
主人公の周囲にいるプロ棋士たちにもドラマがある。
やはり描き方は少し薄くなってはしまっているけど、ただのモブではないという部分では配役がとてもハマっている感じかな。
原作の見た目に無理に似せようとしているわけでもないけど、主役級の俳優ばかりなので安心感があったのは確か
後編から登場の川本家から出て行ったクズ親父の誠二郎は、原作ではもっと嫌な感じの奴だったけど、この映画ではそこまでではないね。
訣別のシーンはシチュエーションも違うのでだいぶ印象が違うけど、伊勢谷友介は演技臭い態度をとるこのキャラを絶妙に表現していたように思いますよ。
漫画原作の実写版としては、上手くエッセンスを拾って主人公のドラマに再構築していると感じました。
前後編合わせて一本として観ると、なかなか良かった。
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