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丸戸史明のライトノベルを原作にしたTVアニメ(2015年と2017年に放送)の劇場版。
同人ゲームを制作する主人公・安芸倫也の突っ走る熱意とヒロインたちの恋のさや当てを描いた青春コメディ。
TVシリーズはずっと観ていたので続きは気になっていたけれど、この劇場版がシリーズの最終回。
いわゆるメインヒロインルートのエンディングということで、いよいよ加藤恵と倫也がくっつくというわけですな。
内容的には主人公たちが制作する同人ゲームのジャンルになぞらえて展開するギャルゲーチックなハーレムもの。
個人的にはハーレムものはあまり得意ではないのだけど、それでも本作が面白いと思うのは登場人物それぞれが持つクリエイターとしての熱意や意地みたいなものが描かれていて、それがストーリーにいい熱量を与えていたところですかね。
あとはたびたび登場するオタクネタやメタ的な会話のセンス。
このあたりが自分の好みに合ったというところは大きい。
この映画もその延長であるので作風的にはそのまま楽しめたし、感情面の描写も紆余曲折はありつつもちゃんとそれまでの(TV番も含めた)積み重ねの上にこの結末にもっていくところが良かった。
本来その世界にかかわりのなかった恵が倫也の何に惹かれていったのか、というところだよね。
まあ実に上手く大団円として収まっている様な気もするけれど、でもメインヒロインルートの展開としてこれでいいのだ。
キモオタの妄想なのだからw
それを自覚した上でそこに突き進むという熱意こそ、本作のプロットであり個性ですわ。
要するにこの作品は、“キモオタの妄想”というベタのベタを“主人公の熱意”を言い訳に使ってやっているわけだ。
けど、それであるが故にメタフィクションな構造を意図的に成立させているところに面白さがあると思うのだよね。
観客が見せられるのは、主人公が作っているゲームの内容とリンクする様な恋愛もの展開だし、登場人物は半ば無自覚に、半ば自覚的に、ジャンルゲームの登場人物のような役割を演じている。
観客に対して「そういうジャンル」という共通認識を持っていることを信頼した上で作られているのが分かるところが、個人的には良いなあと思う次第です。
話のテンポも良かったね。
そうそうエピローグも本作を象徴するかのような構造のネタで笑わせてもらいました。
そして暗転後の乾杯はさらにもう一つ手前までメタのレベルだよねえ、最後まで自覚的でいいw
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