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言わずと知れた、黒澤明、傑作中の傑作。
百姓に雇われた侍7人と野武士との戦いを描いた時代劇。
いやはや、参った。
こんな映画を観ていなかったとは。
全体で3時間半もあるのに、その長さを感じさせない。
前半で丁寧に侍たちや百姓たちの人物描写を行い、後半は徹底して戦闘が繰り返される。
1時間ほどもある戦闘シーンは、それまでの積み重ねたストーリーのおかげで侍や百姓一人一人に感情移入でき、全くもってダレてこない。
こんなに丁寧で力強い娯楽活劇が他にあるんだろうか。
侍7人ともに個性が分かれているけど、特に菊千代を演じる三船敏郎の強烈さはすごかった、信長と秀吉が合わさったらこんな感じなんだろうかw
志村喬が演じる勘兵衛の老練な侍ぶりも良かったけど、なんと言っても“これぞ武士道”といった感じの宮口精二の演じる久蔵が良かった。
勝四郎でなくても憧れるよなあ、これは。
この映画において百姓は完全な弱者じゃない。
搾取される側ではあったけど、裏を返せば落ち武者狩りもする残酷な面も持っている。
でも菊千代が涙ながらに言った
「百姓ぐらい悪擦れした生き物はねえんだ!
ケチで狡くて泣き虫で、意地悪で間抜けで人殺しだ!
だがなぁ!こんなケダモノを作ったのはいったい誰だ!
おめえたちだよ!侍だってんだよ!」
言葉も出ない。
ラストの田植えの歌と4人の墓の対比が無情を映し出し、勘兵衛が「勝ったのは儂らではなく百姓だ」という。
これがただの娯楽ではない、この映画のすごいところだと思ったね。
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