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1998年に29歳の若さで亡くなった将棋棋士・村山聖の伝記映画。
原作は大崎善生の同名ノンフィクション小説。
5歳の時に腎臓病のネフローゼ症候群と診断された村山聖が、将棋と出合い、全身全霊でその将棋の名人を目指し、同世代の羽生善治へのライバル心と敬意を描いた物語。
あらすじだけならとても熱いドラマになりそうだが、主人公の生き様とは裏腹に、映画の見せ方としてはどうもストイックな印象でちょっと地味さが強く出てしまったような感じ。
村山聖を演じる松山ケンイチは、彼のスッとしたイメージから離れて、だいぶ体重を増やしているし、役作りに熱意を感じはするが。
個人的には「お前のどこが命かけてんだ!」という感情の爆発と、「死んだら密葬にしてほしい」と父親と談笑するシーンが印象に残っている。
でも、ことさらにドラマチックにするよりは、全体的にはリアルに寄せた見せ方をしたいという演出方針なのかなと感じた。
対局のシーンでも盤上の攻防は映せども基本的に劇判はなく、駒の音がメインだし。
何を考えているかのモノローグもないし、局面の流れの細かいところよりは空気を描く方を重視しているような感じ。
クライマックスの落手のシーンなんて、まさにそうだよね。
「あっ」といった控室の空気、聖の何かを悟ったような表情、羽生の複雑な気持ちの表れ。
確かによく表れてはいるんだけど、でも抑制の方が強くてどうしても映画としては地味目なイメージの方が強いかも。
描きたいところが多すぎた部分もあるかもしれない。
村山自身の病気、羽生善治との関係、書店員への想い、奨励会員・江川の話、母親の気持ち。
どれも村山聖を表現する上では重要な要素なので、まんべんなく入っている。
まんべんなく入っているがゆえに、それをストイックさで統一すると…地味に感じてしまうのかもしれない。
もうひと押し、映画的な何かがあればなあ…と思ってしまった。
ただ、このように将棋人生を駆け抜けていった若者がいた。
それを知るには良い作品だとは思う。
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