シネつう!
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さや侍
2011年制作

満足度:

松本人志の劇場映画3作目の作品。
侍・野見勘十郎は刀を差さず鞘だけを持つ男。
脱藩の罪で捕えられた勘十郎は、切腹までの30日間の猶予の間に、笑わなくなった藩主の息子の前で1日1芸を行い笑わすことができれば放免される<三十日の業>を言い渡される。

松ちゃんの映画としては、前2作に比べてシュールさが大人しくなり、普通に観て受け取れる作品になっている。
主人公が何故さや侍なのか、何故1日1芸を披露するのかという展開そのものに、ちゃんとした理由付けがされているところが大きいのかな。
しかし何より驚いたのは、エンディングで"まともな"センチメンタリズムを描いてきたことじゃないだろうか。
まともとは言いながらも、突然歌に変わっていくという見せ方などで変化球にしているとはいうものの、シュールなだけだった1作目、抽象へと飛んだ2作目に対してまた違う方向になってきた。
まともだから逆に驚きというのは、松ちゃんの作品に対する負の期待感の良い意味での裏切りだったかもしれないw

主役の野見勘十郎を演じるのは素人のおっさん野見隆明。
素人なので演技らしい演技を見るためというよりは、1芸を一生懸命してる姿を観察するために見ているようなもんだけれど、この作品にはその素人さが合っていた。
仮に松ちゃんが主演で一芸のそれぞれをやったとしても、笑いを狙うワザとらしさが前面に見えてしまったろうしね。

展開される芸そのものは古典的なものから大掛かりなものまで、定番と思われるものばかり。
そこには芸人だからこそ、芸に対する考え方みたいなものが垣間見える気がする。
ただその芸を見て笑えるかというと、全体的に序盤から中盤までが面白いわりに、後半は大掛かりでも面白みには欠けた感じもした。
巨大風車なんかはセンチ方面に狙いすぎた感もある。

とはいえ、テンポよく「ご自害ください!」「切腹を申し渡す!」と突っ込みの入る序盤、そして勘十郎の切腹シーンへのシリアス転換など、映画として観ても個人的には悪くないし、ただのコントだとも思わない。

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