シネつう!
JAPAN STYLE !!

屍人荘の殺人
2019年制作

満足度:

今村昌弘の同名ミステリー小説の実写化作品。
ロックフェス研究会の合宿で起きた密室殺人を描く。

原作は未読。
ということもあってタイトルの“屍人”がまさかゾンビの事とはつゆ知らず。
ミステリーの舞台としては鉄板のクローズドサークルを、まさかゾンビの大群から身を隠すために立てこもるペンションにするとはねえ…やられましたw

ゾンビに囲まれた状況自体はほぼマクガフィンみたいなものだけど、ジャンルものとしてのゾンビ要素を殺人トリックにも取り入れているあたりはユニークで面白い。
ゾンビモノという非常に突飛な世界観でもそれに甘えたミステリー的にウソになる様な要素がないから、どちらのジャンルに対しても真摯さを感じてしまうのだろう。
ただ真犯人はすぐに察しがつくし、殺人に使ったトリックが実はゾンビに囲まれた状況になってから思いついたものだというのは…ちと都合が良すぎた気もするけれど。
まあそこはご愛敬ということで。

主演の神木隆之介は頼りにならない推理力と心の声が漏れている表情の演技がとても微笑ましく面白かった。
キス未遂がバレて狼狽したり、良いキャラクターだよなあ。
その神木演じる葉村の大学の先輩で「ホームズ」こと明智恭介(中村倫也)もキャラが濃い。
最初はこのコンビで話が進むのかと思いきや序盤でいきなりの退場して驚いたけど、作劇としては主人公の心に刺さったトゲとして機能させるために、よりキャラを濃く見せるというよくある手とも言える。
しかし輪をかけてキャラが濃いのは葉村と行動する探偵役のヒロインの剣崎比留子で、見た目に対しての口調や行動の妙なエキセントリックさに何とも言えぬ魅力を感じる。
剣崎役の浜辺美波はこの突飛なキャラクターを嫌味なく上手く演じてるし、神木隆之介とのコンビ感はとても良かった。

割とテンポよく展開し、状況の重さに対して妙に気の抜けたやり取りやSEがちょいちょい挟まる感じにTVドラマ「TRICK」の演出を想い起す場面もあるが、監督の木村ひさしってほんとに「TRICK」の数エピソードで演出やってたのかいw
そりゃあノリが似てるわな。

一方でエンディング付近に来るとちょっと映画的なケレン味についてもう一歩物足りないところもあって、特に真犯人の最期のあたりとか、明智へのトドメとか、見せ方が少し地味に感じたかなあ。
そこまでがエキセントリックな状況だったり主役コンビのやり取りに面白さも感じる内容だったので、フェードアウト気味に終わるエンディングはちょっと拍子抜け。
「TRICK」みたいにしろとは言わないけど、何かニヤッとさせてくれる感じで終わってくれた方が、映画としては面白かったかもね。

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