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望月衣塑子の同名小説をシム・ウンギョンと松坂桃李で実写化した作品。
東都新聞にある大学新設計画の内部文書が届き、若手記者の吉岡は取材を開始する。
一方内閣調査室に出向していた杉原は日々情報操作の仕事をこなしていたが…。
新聞記者を題材にした映画は(主に洋画で)名作も多いが、それらと比べるとこの映画は地味な印象。
なるほど新聞記者として“権力の監視機関”と自称するからには、対峙する“権力”はそもそも悪事を働いているという前提に立った話になるわけだ。
そこで本作では、内閣調査室が政権にとって都合の悪い情報を操作して国民の目を欺いている…というお話にしている。
個人的にはもちろん政府が全くそういうことをやっていないとも思わないが、だからと言って別に国民が何もかもを知る必要もないと思っているクチなのだけれど。
本作の内調の描き方の様に、あからさまに血の通わない組織として描かれるのは「これも一つの印象操作」ではあるかなと思ってしまう。
とはいえ、そこはフィクションとしての「悪代官」みたいなものなので、話としてはありだろう。
しかしその一方で劇中で描かれる出来事は実際の元ネタを簡単に連想できるものばかりなので、観ているとフィクションか実録モノかのあいまいさがどうも気になってしまう。
その割に終盤では「軍事転用できる化学兵器の研究」云々が核心であるような描かれ方になり、どんどんフィクションになっていくのだけど、それにしたって微妙に物足りない感じ。
実際の出来事をベースにしているところに中途半端にフィクションを入れるくらいなら、もっとパンチの効いた嘘をついた方が盛り上がったかも。
軍事目的なのが問題なのか、一人の官僚に背負わせて尻尾切りをしたことが問題なのか、内調が情報操作をしていることが問題なのか。
まあ言いたいのはその全部なんだろうけど。
とどのつまり「政権の行うことが問題」という大前提に基づいていることで、どうも問題の本質が全体に発散してしまっているフシがある気もする。
そのへんがこの映画を観てモヤモヤした部分かな。
新聞記者・吉岡を演じるのはシム・ウンギョン。
微妙に日本語が片言なのは米国育ちの日韓ハーフという設定なので、そこには違和感は持たないけど、米国育ちである設定がどの辺に生きているのかはちょっとわからなかった。
一方、内調の官僚・杉原を演じるのは松坂桃李。
同じ様に仕事のやり方に戸惑うという役どころでは「孤狼の血」などを思い浮かべるけど、そちらに比べると普通な感じかなあ。
ディープ・スロートとしては割とやばい橋を渡ってるはずなんだけど、どうも行動に詰めが甘い感じがするのは気になるところではある。
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