シネつう!
JAPAN STYLE !!

沈まぬ太陽
2009年制作

満足度:

山崎豊子の同名小説を渡辺謙主演で実写化した作品。
航空会社での組合闘争の結果、懲罰人事により海外に飛ばされた主人公・恩地。
9年後に帰国出来たが、ある日520名もの犠牲者を出す墜落事故が発生する。
日航123便墜落事故をモチーフに、架空の航空会社組織と社員を描いたドラマ。

時系列としては上記の通りだけど、ストーリーは墜落事故が描かれてから過去を振り返る形でアフリカ編が展開される。
ちなみに原作は未読です。

組合の委員長だったことで左遷させられ、さらに2回も帰国を引き延ばされる主人公。
会社組織の歪んだ論理によって不当に扱われることの怒りは、主人公にとても共感してしまった。
自分の信念に愚直な恩地という人物は人間的に好感が持てるし、演じた渡辺謙はイメージに合っていると思う。
ただ自分の信念のために耐えている以上に、周りの家族にも苦労をかけているわけで、その辺りがちゃんと言及されていたのは良いね。
息子が次第に親父を理解してくる辺りの流れも良いと思う。
そういう意味では幸せな人物だろう。

対極的に在る行天(三浦友和)という人物は逆にいけ好かない人物の極み。
同輩や昔の仲間であろうと、例え上司であろうと利用することしか考えず、虎視眈々と出世の機会を狙って根回しを怠らない策士。
あぁいけ好かない。
でもこういう人間の方が出世するもんなんだよなあ。
この話はそういう不条理劇だと思う。
映画として纏めるために行天は最終的に地検に挙げられることになるけど、現実だったらもっと理不尽に生き延びるんだろうね。

行天の不正が明るみになる伏線は中盤以降度々出てくるけど、伏線という割にはちょっと分かりやすい展開だった。
分かりやすさという点では“手紙”を使った演出もそうで、娘→主人公、主人公→遺族でキャラクターに心情の吐露をさせて直接的に観客に語るんだけど…、分かりやすさとは裏腹に安易さは否めない。
冒頭では日航機の乗客が家族に宛てた有名なメモが2回も朗読され、あざとさを感じてしまう場面もあったかな。

全体的には202分という長尺が21世紀の邦画では珍しい大作感のある作品だった。
その尺でも長いとは感じさせない力強さがあり、この話を映画にしようという志の高さは感じられます。
だけど、丁寧なんだけど、この長さでも話が表面的にしか見えなかったのが惜しい。
様々な陰謀・思惑が渦巻き、会社に翻弄され続けた人々と利用した人々の30年を描くには3時間半では足りなかった。

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