シネつう!
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空の青さを知る人よ
2019年制作

満足度:

監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里の劇場オリジナルアニメ作品。 13年前に両親を亡くし、姉のあかねに育てられた主人公のあおいだったが、自分のために恋や夢を諦めた姉の姿に複雑な思いを抱いていた。
そんなある日、かつての姉の恋人・慎之介が13年前の姿で主人公の前に現れる。

超常的な現象によって“過去”が今の自分の前に顕現するというファンタジーは、監督の前々作「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」と似たような感じだが、死んだ者が現れるのではなくて、今生きている者の過去の想いが現れるところがちょっと違う。
その“生霊”として現れるしんの(13年前の慎之介)に「お前は先に進んだんだろう!」「ガッカリさせるな!」と大人の慎之介が叱咤激励される姿を観た時、それを俺自身に当てはめると「過去の自分はどう思うのかなあ」などと考えて切なくもなった(苦笑)
でも13年前にあった慎之介とあかねの別れが彼らにとって心残りだったり、その後の現実が夢見たものとは違ったものにさせたのだとしても、自分で選んだ人生を過ごしてきたという部分を否定せずに再び前に進めようとするストーリーは良いなと思った次第。

ジャンル的には青春映画だと思うけど、何かを諦めた大人の方がストーリーのメインになっているのは間違いないか。
まあその辺は自分がオッサンだから余計にそう思うのかもしれないけど、あかねと慎之介のドラマには共感してしまうよねw
対して、あおいとしんのの立ち位置はそれに対する狂言回し的な設定になっている印象。
とはいえ、あおい自身の想いに心を動かされるような場面もあるわけで、そういう匙加減での心情の描き方は上手いよなあとも思う。
ただ、終盤で文字通り空を飛ぶという勢いは、若者の特権としての比喩としてはありかもしれないけど、この世界観だとちと勢い有りすぎだったかなあとも。

タイトルの「空の青さを知る人よ」は劇中曲のタイトルでもあり、劇中でも言及されるとおり「井の中の蛙大海を知らず」の続きの「されど空の青さを知る」から取られている言葉でもある。
面白いもので、前文だけの「井の中の蛙〜」印象に対して、その続きが付くだけで印象がガラッと変わってしまう言葉だけど、テーマや登場人物の状況を上手く表すもんだという部分でも感心したりもしました。

ところで冒頭でいきなりゴダイゴの「ガンダーラ」が演奏されてたけど、歌詞の「夢が叶うという手の届かない彼の地」という内容がストーリーに対する直球の引用で、なんか一気に引き込まれてしまった。
というか、「西遊記」(再放送)を観て育ったおっさんの俺としては、メロディを聴くだけで昔に気持ちが引き戻されたりして切なくなったというか…。
なんかまんまとやられている気がするなw


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