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富田常雄の同名小説を原作にした、柔道を通じて成長していく青年の物語。
巨匠・黒澤明の第一回監督作品。
元々の尺は97分だったんだけど、戦時中の節電政策で制作者に無断で79分に短縮されたという悲劇の作品。
カットされた部分は戦時中の混乱で散逸し、戦後の再公開時にはその部分に注釈を入れたバージョンを作ったという苦肉の策が取られてます。
今回観たのもその短縮版なんだけど、その部分は注釈で脳内補完するにして、いや良くできている。
他流試合で相手を投げ殺し、その相手の娘の表情が忘れられない三四郎(藤田進)。
その後、別の他流試合を行うことになるが、その相手の娘が父の勝利を神社でお祈りする姿を目撃し…と、まあベタではあるが心情の揺れ動きの分かる物語の構成がいいね。
短い時間でどう話を進めるかという手本が有る様にも思えた。
序盤、ただの下駄を映すだけで時間の経過を表現したり環境音で心情を表したり、今ではベタな方法でも、そういった分かりやすさは映像表現の土台だよなあとつくづく思う。
試合のシーンはダイナミックに投げ飛ばされすぎなところもあるが(w)、それはそれでアクションとしての見せ場になっているし、カットを割ってのその一連の流れは上手い。
さすがに三四郎と村井師範(志村喬)の最初の組み手は、緊張感よりも社交ダンスっぽさが目について気がそれてしまったが、それはご愛敬か。
そういえば三四郎がずっと池に浸かっているシーンでは水面から湯気が立っている様に見えた。
後の完璧主義となった黒澤監督であればこんな事はないだろうけど、ここは若さなのか。
それとも三四郎の熱気で蒸気が発生??w
もどる(サ行)
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