シネつう!
JAPAN STYLE !!

杉原千畝 スギハラチウネ
2015年制作

満足度:

第二次大戦下、6000人のユダヤ人に通過ビザを発給し命を救った駐リトアニア日本領事・杉原千畝の伝記映画。

杉原千畝といえば「日本のシンドラー」とも呼ばれ、ユダヤ人へのビザ発給を行った人物というイメージくらいしかなかった。
鑑賞前は、また日本のドラマらしくヒューマニズムむき出しの話になるのか等と思い込んで観始めたのだが、意外やオープニングシークエンスが終わるとスパイ映画風味の北満鉄譲渡交渉のエピソードが始まる。
世界情勢が複雑化する中で、杉原自身が行う諜報活動が彼の信念に基づく行動して描かれて行く様子は、後のビザ発給にどうつながっていくのか?などと興味がわいて引き込まれたね。

もちろん2時間強の映画に収めるためには話を簡略化したり説明を省いているところもあるだろうが、人物や時代背景を丁寧に掘り下げようという姿勢に好感。
杉原がユダヤ人にビザを発給する決心に至る場面でも、単純なヒューマニズムだけで語らずに、過去の出来事が心を動かした様に描いていて静かにドラマを盛り上げる。
まあ満州時代の白系ロシア人協力者だったイリーナが再び現れるなんてのはご都合過ぎるし、ちょっと力技な創作な気もするが…この辺はドラマとしての工夫ということで。
実際に諜報活動の協力者や実態なんてのがハッキリ残されてることもないだろうから、逆を言えば想像を入れ込みやすいと言えるかもしれないけどね。

しかし映像としてもよくある邦画の嘘っぽい感じとは画面の雰囲気が違う。
ポーランドでのオールロケが効いているのだろうか、やはりその地の空気感というのは映像に現れるもんなんだなあ。
杉原千畝を演じる唐沢寿明のセリフの大半は英語だし、メインの外国人たちはポーランドの良い役者たちで演技も上手いので、ちゃんと“映画”らしい重厚さを感じられたのは良かったな。
(逆から言うと、再現ドラマの様な安っぽい感じではない、というところか。)

終盤、ウラジオストクの場面ではJTBの大迫を演じる濱田岳が良いところを持っていこうとしていた感じもしたが、あれこそが日本っぽいヒューマニズム演出か。
そこは最後までもう少しストイックに行ってほしかった気もするものの、ハルビン学院の「自治三訣」がここで再提示されたりと伏線の使い方は悪くない。
ウラジオストク総領事代理・根井とのハルビン学院繋がりで決心するところなど、事実は実にドラマチックだと思った次第。

ユダヤ人へのビザ発給のイメージが強かった杉原千畝のイメージだったが、(創作が多いとしても)優れた諜報外交官の一面を知ることもできたし、伝記ドラマとしても興味深くて良かった。

もどる(サ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01