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ある廃墟で見つけた扉の向こうに別の世界を見た主人公・すずめ。
そしてそこから飛び出した"ミミズ"と呼ばれる巨大な赤黒い渦巻き雲が、その地に地震をもたらすことを知る。
思いのほかテンポ良く進むロードムービーで面白かったと思う。
東日本大震災を主人公の背景にしながら各地の廃墟で地鎮をするという展開は、日本が抱える災害という痛み(トラウマ?)に向き合っていく話のようにも思えて少し考えさせられる部分もあった。
そういう意味では中盤に神戸が出てくるところも、地震というテーマを描く上で確信的にやっているのだと思う。
途中で出会う人達がみんないい人たちなのが良いね。
設定的には、地震の原因は“常世”と呼ばれる空間にいるミミズ(厄災)が廃墟のドアを通じて現世に現れ、地面に倒れることで起きていることになっている。
この“常世”が“全ての時間が混じり合った場所”ということで、すずめの過去の記憶ともリンクするキーにもなるのだけれど、振り返って考えるとかなり勢いでごましたモノを見せられていたような気がしなくもない。
何というか、完成された世界観の中でキャラが動いているというよりは、キャラを動かす道具として世界観が後から作られているような印象が強いかな。
観ている間はそれを感じさせないくらい強引に話が進んでいくのだけど、それは主人公が世界観の全体を把握しないまま巻き込まれて突き進むことで、同時に観客の目もごまかせているのではないかと感じる。
一番気になるのは3本足の椅子の存在で、観ている中ではそれが循環しているのかそうでないのかが分かりにくい。
序盤で椅子に変身してしまう宗像草太が、椅子と融合したのか、それとも椅子の姿に変わったのか(その瞬間に本来の椅子が消えたのか)がハッキリしないから混乱を招いている気がする。
それでもそれなりに納得させられてしまうのは、それぞれの設定にそれなりのビジュアルイメージ(椅子やネコ)で印象付けることに成功しているからだろう。
そういうところの強引さが上手いなあとは思った。
新海監督は今作でも別の時空で想い人が分かれ離れになる話を撮ってたねえ。
「君の名は。」「天気の子」から3作連続w
最初の「ほしのこえ」もそうなのだから、監督にとっては本当に好きなシチュエーションなんだろう。
そういう“好き”が原動力になっているモノにはキチンと勢いがついてくる。
そんなことを感じさせる映画でした。
もどる(サ行)
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