シネつう!
JAPAN STYLE !!

残穢
‐住んではいけない部屋‐
2015年制作

満足度:

小野不由美のホラー・ミステリー小説の映画化作品。
小説家の主人公・私は読者から募集した怖い話を基に小編を書きあげていたが、ある日、その読者の一人から気になる内容の手紙が届く。

「生業」を「せいぎょう」と読むの!?と、いきなり台詞が気になってしまった。
口語なら「なりわい」って言ってほしいなあ。
まあいいや。

ジャンルはホラーだが、心霊体験の源泉をたどる過程を楽しむ推理ミステリーの趣の方が強い。
それは一体何か、何故起こるのかを探っていくという推理的な構成は「リング」に近いかもしれないが、こちらは土地に染みついた業の様なものに触れると呪われる類。
その土地での過去の出来事を調べることと、人の入れ替わりが多い物件や土地という、現代の地域社会的における人の流動性が上手く取り込まれているともいえる。
ホラーの怖さは日常との連続性に裏打ちされてこそだと思うが、「あの家は住人が落ち着かないよね」というよくある話から始まる物語で、大阪人の俺としては「刑場跡の千日デパートが焼けて100人死んだ」なんて話が真っ先に浮かぶ。
そういう意味で、土地の穢れみたいな話は感覚的に受け入れやすい感じ。

一方、主人公たちが過去の出来事を探っていく過程で様々な出来事を知っていくわけだが、その部分はTV番組よろしく回想&再現VTRといった趣で映される。
ただ証言者がピンピンして怖がるでもなく証言しているのであれば、逆にヤバい事態は映らないと分かってしまうので怖くない。
これはホラーとしてどうなんだろうと思うわけだが、どちらかというとこの映画はそういった証言の色々を辿ることで、事件の源泉と思われる奥山怪談に繋がっていく部分にこそ恐怖を見出さないといけないのだろう。
確かに関係ないと思われた冒頭のエピソードに繋がったシーンは感心した。

そして主人公たちはその震源地である屋敷に入っていく(何故夜なんだよ)わけだが…。
この場面を何故客観で撮ったのかがすごく疑問。
ここだけでもPOVにすればすごく怖くなったと思うのになあ。
大半が客観映像の中で一部POVにしたって別に良いと思うんだけど…「死霊館」でもやってたし。
そこが勿体ないと思った。

さて結末は、結局色んな人が穢れに触れてしまって…というオチか。
まあホラー映画的にはベタな感じだけど、でも「リング」ほどの絶望感はなかったかな。
全体的に音響の設計は良かったので、TVで観るくらいなら映画館で観たほうがいい作品だとは思ったけど…。


もどる(サ行)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01