シネつう!
JAPAN STYLE !!

DESTINY
鎌倉ものがたり
2017年制作

満足度:

西岸良平の漫画「鎌倉ものがたり」を原作に、山崎貴監督が実写化したファンタジー映画。

同じ原作者の「三丁目の夕日」を「ALWAYS 三丁目の夕日」として実写化した山崎監督の作品だと思えば、納得と安心の内容ではある。
どことなく懐かしい風景や雰囲気、悪意のない人たちによる日常描写。
「ALWAYS」と違うのは、その舞台である「鎌倉」が少し不思議な所として魔物(と言っても愛嬌たっぷり)たちが当たり前に存在する世界だということか。
「ALWAYS」は理想の「昭和30年代」というファンタジーだった気がするが、こちらは「鎌倉」という異世界ファンタジーという感じ。

主人公・一色正和とその妻・亜紀子の微笑ましく可愛らしい夫婦の関係性を軸にしたハートフルな感じが観ていて気持ちいいよね。
予告編では、黄泉の国に行ってしまった妻を取り返し行くギリシャ神話のオルフェウスの様な話がフューチャーされているように感じたけど、全体的には話の着地点をそこに用意しつつも他のエピソードをかき集めたような構成で、個人的にはそちらの方が面白みはある。
実際、観ながら「意外に色々起きて面白いなあ」とは思ったし。
それぞれが終盤に向けた分かりやすい伏線になってるけど、その辺は段取りというか予定調和的というか…なんだか分かりやす過ぎるきらいは少しあるかも…?
意図的であろう漫画チックなリアクションも相まってリアルさはないが、でもその微笑ましさがいい意味でこの緩いファンタジーには合っていると思う。

原作は未読なのでこの映画だけの話で言うと、前述の通り黄泉の国に行く終盤よりもその前の現世のエピソードが雰囲気的には好き。
終盤の黄泉の国の話は、話のまとめとしては必要なのは分かるけど、天頭鬼はちょっと安易な様な…やっぱり漫画だなというか。
どうしても「千と千尋の神隠し」が脳裏にちらつく風景も気になるところだし。
魔物のデザインに関しては、山崎監督のキャラデザが何か代わり映えしないのも少し気にはなるかなあ。

さて、監督は時代設定を現代だと言っているけども出てくる車や道具の数々はわざと昭和の後半という雰囲気にしているようで、そのあたりの懐かしい感じは魅力。
あと死生観が大きく世界観に影響する内容ではあるけど、死別とは現世と黄泉の国で隔たられるという事に他ならず、死が生の地続きになっていて話が極端に暗くならないのも良い感じでした。
まあ相変わらず「ここで感動してください」という分かりやすい演出が差し挟まる場面もあるのだけど、いつもの様に佐藤直紀の劇判の主張が強いせいかな。

そうそう、役者は毎度の山崎作品らしく豪華だよね。
堺雅人と高畑充希の夫婦役は実際に微笑ましくていい感じでした。
出演場面の半分以上がCGキャラになってしまっても、堤真一は安定していたな。
ちょい役の吉行和子と橋爪功がここでも夫婦役というのは、最近の「家族はつらいよ」を観ているとどうも妙な感覚に陥るw
あと死神役の安藤サクラが印象に残ったけど、この世界観だと死神も良い人ばっかりなんだろうなあ。
良いキャラだと思ったね。

ちなみに、正和と亜紀子が「実は前世から、いやその前から何度も何度も夫婦に…」というくだりは、思わず「『君の名は。』の主題歌…、あ、いや『アクエリオン』かよ!」と思わず心の中で突っ込んでしまったが(苦笑)
掛け軸やら置物で前振りしていたとは…さすがに気づけんわ。


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