シネつう!
JAPAN STYLE !!

ドラえもん
のび太と雲の王国
1992年制作

満足度:

劇場版「ドラえもん」第13作。
「天国が存在しないなら自分たちで作ろう」と雲の上に自分たちの楽園を作り始めたのび太たち。
ある時、迷い込んだ別の雲で天上人に遭遇し、彼らが「ノア計画」という地上を洪水で一掃する計画を持っていることを知る。

「アニマル惑星」に続き、環境問題や人間活動の問題を全面に押し出したストーリーは少々説教臭い。
とはいえ“雲の上の自分たちの街”という設定は、子供なら思わず憧れてしまう様な世界で話への引き込み方が上手いなあと思ったりするね。
ドラえもんが壊れた時、自分たちの雲に戻るための伏線も分かりやすくて良い。
他には「モアよドードーよ永遠に」「さらばキー坊」「ドンジャラ村のホイ」といった過去の「ドラえもん」の話に出てきたキャラの登場はファンとしては嬉しいところ。
でも、これまでの短編とは独立して作られていた大長編のルールからしたらちょっと異質かな。
のび太たちがやってきたことの総括として、ある種の集大成的な作品と思えばこういうのも有りだとは思うが…。
(集大成という意味では、確かにこの作品以降は大長編の質が落ちていったわけだけど…)

劇中、ドラえもんは「使うつもりはない」と言いながらも、天上人に対する威嚇のために“雲もどしガス”の大砲を作る。
天上人にとっての最終兵器であるそれは、地上人の「ノア計画」に対する対抗手段となるわけだけど、これは完全に冷戦による軍拡のメタファーだよね。
子供たちのための映画で、これだけ分かりやすく相互確証破壊の恐さを見せているというのは大人心には哀しいなあ…。

結局、悪者(地上の密猟者)に雲の王国を乗っ取られ、実際に発射されて天上人側に被害が出たことで、ドラえもんはガスタンクへの決死の特攻を試みる。
観ている側としてはドラえもんの決意に感動しつつも、自らの手で築き上げた“雲の王国”を崩壊させなければならなかったことの悲壮感に涙を禁じ得ないところです。
人間の愚かしさに対する作者の想いを感じました…。


もどる(「ドラえもん」シリーズ)

当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01