シネつう!
JAPAN STYLE !!

映画ドラえもん
新・のび太の日本誕生
2016年制作

満足度:

水田わさび版「ドラえもん」劇場版第十一作。
1989年に公開された「のび太の日本誕生」のリメイク作品。

序盤から中盤に掛けてはオリジナルへの敬意を感じるほぼそのままのリメイクで、安心して楽しめる。
自分が小学生時代に観て感じた“自分達だけの秘密基地を作り出す感覚”、これは他の大長編でもよく使われる導入部分だけど、それが生み出すワクワクが同じテンポで描かれていたのが良いね。
その上で今作では「氷河期の海面降下」や「日本人のルーツ」についてさり気なく勉強できる部分が、やはり藤子F先生原作の素晴らしいところ。

さて基本的にオリジナル版と同じ展開なのだけど、一部分改変もされている。
まず大きな変更はタイムパトロールが最後の最後まで現れないところ。
元々は終盤に差し掛かったところでのび太が一人はぐれた時に、ギガゾンビを内偵するためにマンモスに化けていたタイムパトロールが現れるのだけど、その場面をごっそりカット。
「ここをカットしたら、タイムパトロールの登場が唐突になるやんけ!」と話に無理が生じるんじゃないかと思ってしまった。
ところがちゃんとドラミが通報したことにして辻褄を合わせてきたので、嗚呼ちゃんと納得できる変更にしているじゃないかと安堵。
要らぬ心配でしたw
そう、中盤でツチダマの成分解析をドラミに頼むシーンがあったのだけど、てっきり映画版お約束のドラミのゲスト出演だとばかり思ってました。
まさかちゃんとした伏線だったとは…。
(ちなみにタイムパトロール隊員は「T・Pぼん」のリームだよね?
凡とユミ子らしき隊員もいたがw)

そもそも何故のび太の遭難シーンでタイムパトロールを出さなかったのか。
この辺に監督の意図は現れているのだと思うが、一つはここでのび太が観る幻に「誰の力も借りない」という自身の発言の責任を痛感させようとしたのだろう。
そしてもう一つはギリギリまでのび太やドラえもんたちだけで状況に立ち向かわせるためか。

よく「ドラえもんは最後にタイムパトロールに頼って自分たちで解決してないじゃないか」と揶揄されるが、オリジナルの「日本誕生」がまさにその例としてよく挙げられる作品でもあった。
(まあそこには藤子F先生の意図もあっただろうが。)
そういう意味で、本作はギガゾンビと決着をつけるまでタイムパトロールが現れず、ドラえもんたちの力で最後までギガゾンビと立ち向かう。
そこがオリジナルと大きく違うところでもあり、確かにこれによって冒険物語としては熱くなった部分はあるし、元々完成度の高い原作に対しても許容できる範囲での変更かなと思う。

あと他の変更点では、のび太のママのちょっとした描写の追加によって物語に深みが増した。
ガミガミ怒るのび太のママもちゃんと親なのであって心配しているし、そこにちゃんと愛がある。
ただ、それをこれ見よがしには伝えないし、描かない。
「親の心 子知らず」のまま描き終わったのは、「ドラえもん」を子供の物語として監督が理解しているからだろう。
だがその見守るママのあたたかい視線、オリジナルにはなかった親目線の描き方もとてもいい映画だと思う。


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