シネつう!
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映画ドラえもん
のび太の宇宙小戦争 2021
2021年制作

満足度:

水田わさび版「ドラえもん」劇場版第十六作。
1985年に公開された「のび太の宇宙小戦争」のリメイク作品。

本当は2021年3月に公開予定だった作品だけど、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2022年3月へと公開が1年延期。
その間に世界情勢は大きく変わり、ロシアがウクライナに侵攻して'22年3月の今はまさにキエフで首都攻防戦が行われているという状況。
この映画は軍事クーデターとレジスタンスの話なので正確には国家間の主権や戦争の話とは違うけど、独裁者と反抗する市民や大統領という構図には「おそらく'21年3月に観ていてもこんな気持ちにはならなかったのだろう」という要素が多々含まれていて、観ていてなんだかとても複雑な気分になります。

もっとも藤子・F・不二雄先生的には「ガリバー旅行記」や「スター・ウォーズ」を「ドラえもん」として描いている要素が強いわけで、背景となる“独裁政権vsレジスタンス”にしても「スター・ウォーズ」における“帝国vs反乱軍”の構図をもじったものだよね。
原作は1984年〜1985年の連載なので、そのことを考えれば軍事政権やレジスタンスのイメージも第二次大戦や当時の東欧・南米の独裁国家から来ているのだろう。
それに本作自体もご時世とは関係ない2020年頃に制作されたものだけど、偶然にもこんな形で時代の空気に合ってしまうというのは何とも皮肉な限り。

さてリメイク作品としては、本作は若干オリジナルから変更が加わってます。
一番大きいのはパピの姉・ピイナの存在で、それによってドラえもんやのび太たちがピリカ星に行く動機が変わっている感じ。
つまり“しずかとの人質交換のために自身を差し出して敵に捕まったパピを救いに行く”のか、“パピの大切な姉が人質になっているのでパピと一緒に助けに行く”のかの違いだけど、個人的にはオリジナルの前者のままの方が良かったかな。
ドラえもん達の友情と責任感に基づく動機としても、前者のほうがドラマ性が強かったと思うんだけど…。
そもそも中盤のパピとしずかのピンチにドラえもん達が間に合って、結果救い出してしまうという展開もちょっと出来すぎ。
原作が中盤でパピが捕まるというシリアス方面に振っているのに、わざわざ甘めな方向に変えられたのがなんだかねえ。

敵である情報機関・PCIAの長官ドラコルルが最後まで有能な人物として描かれること自体はかなりアリなんだけど、それなら中盤でも“ドラえもん達よりドラコルルの方が一枚上手”を貫いてほしかったと思う。
でないと最後に用意された“スモールライトの効果切れ”の一発逆転感も薄くなってしまうもの。
そういう面では終盤の処刑シーンで用意した転落しかけたパピ救出の流れも、のび太の見せ場を作るために取ってつけた感が強くて気になったな。
あそこは「全員捕まってもうだめだー!」であってほしかったし、「のび太がどうにかするのか?」という要素は無いほうが緊張感があったのに。

なんか気になるところばっかり出てきますが、もちろん良かった部分もあります。
小さい側から見たときの相手の巨大感などの表現は良かったし、戦闘シーンも今時のアニメらしいスピード感も出ていたし。
序盤のダイジェスト風味な展開はやや駆け足感もあったけど、話のテンポ自体は良かったしね。
あ、でも終盤で「チーターローション」の出番を削ったのは許せんw
あの道具は子供心にお気に入りだったのにー!

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