7
水田わさび版「ドラえもん」劇場版第十七作。
空に浮かぶユートピアを舞台にしたオリジナル作品。
空が舞台の「ドラえもん」といえば「のび太と雲の王国」を連想する世代ですが、本作は"雲かためガス"も"天上人"も出てこないオリジナルの話。
なのにどこかの大長編ドラえもんで見たような設定が組み合わさってる印象もあるかな。
せっかくのオリジナルなのだからもうちょっと目新しい感じでも良かった気はするけど、結局のところはある種の「映画ドラえもん」という枠の中で収まってしまったのはもったいない印象。
特に序盤の裏山でのび太の鼻に何度もつこうとした虫が、実は姿を変えられたドラえもんだったという展開は「魔界大冒険」を想起するし、ユートピアの黒幕は「日本誕生」のギガゾンビを思い起こしたりもする。
そういえばどちらもリメイクされてたっけ…と思ったら、「のび太の新魔界大冒険」が16年前の作品、「新・のび太の日本誕生」ですら7年前の作品なのだから、子供がターゲットの作品なら1周回って似たような要素があってもまあしょうがないか。
そんな具合にある種の「映画ドラえもん」ならではの型にハマってはいるので、その意味では普通に楽しめる映画になっている。
のび太にとっては「洗脳よりもドラえもんとの友情のほうが強い」というのも良い展開だし、ひみつ道具のおまけにしては魅力的過ぎる「インスタントひこうきセット」もワクワク感があるよね。
もう少し飛行船での冒険感があっても良かった気はするけど、まあそこは尺の都合もあるのかな。
一方で気になるのは、これみよがしに登場するセールスマンロボットが単なるゲストでしかなかったところや、賞金稼ぎの銃が何故"虫に変身させる銃"なのかということに全く理屈が存在してない部分ですね。
そういう細かい部分の合理性が子供だましだと、やっぱり藤子F先生の書いた昔の大長編と比べた時には物足りなさが残ることになってしまう。
ラストで今作のキーキャラクターであるソーニャがみんなを救うべく自爆してしまうけど、彼のメモリーユニットだけが奇跡的にドラえもんたちのもとに落ちてくる。
「あるべきところに戻ってくるんだ」という強引な解釈で突き進めてしまうけど、さすがに「そんなご都合主義があるかい!」と思わず言いそうになってしまいますな(苦笑)
どうせ救うのなら、実際に爆発で壊すのではなくて、そこまでに出した道具を使って「なるほど」と思わせる展開で脱出させたほうがまだ良かったような気も。
まあそれでも、その後に0点のテストが「あるべきところに戻ってきた」オチがちょっと面白かったのでいいか…。
もどる(「ドラえもん」シリーズ)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01