シネつう!
JAPAN STYLE !!

東京オリンピック
1965年制作

満足度:

1964年に開催された第18回夏季オリンピック大会の模様を撮影した、市川崑監督の記録映画。

「芸術か記録か」で論争になった作品であるが、単純に記録であるなら半世紀を経た後に観てどれほどの感慨を得ることが出来るかは分からない。
この映画が半世紀後に観てもなお観る者の気持ちを揺さぶるのは、競技前の選手の緊張、競技後の表情、躍動する肉体といった人間を映し出したものだからだと思っている。
ただ、アフレコされた効果音やモンタージュ的な砲丸の着地映像など、ある程度の創作が入っている以上、純然たる記録映画ではないという意見ももっともだとは思う。
まあドイツ五輪を記録した「オリンピア(「民族の祭典」「美の祭典」)」の様に競技の再現映像までは作っていないだろうが。
3時間近い長編作品だけれど、作り手の“見せたいもの”がハッキリしているからか、冒頭30分間の開会式や終盤の30分近くがマラソンに費やされたりして、逆にかなり省略された競技があるのも仕方がないところかもしれない。

幾度となくドキュメンタリーで観た開会式だが、改めてシネスコの映画としてみると感慨深い。
差し挟まる観客の表情、臨席する昭和天皇の映像、鳴り響く入場行進曲「オリンピック・マーチ」によって場の雰囲気がひしひしと伝わってくる感じが良い。
米国(USA)とソ連(USSR)が続けて更新したり、当時分裂していたドイツの統一選手団など、歴史を感じさせる映像の中、「平和の祭典」として開催された東京オリンピックの信念はそこに焼き付いている気がする。

閉会式は、当時ハプニングだったらしいけれど、国の隔てなく混然と入場する各国選手団の和気あいあいとした姿に泣きそうになってしまった。
考えてみれば今のオリンピックもこのスタイルであるが、やはり1960年代は時代が違う。
冷戦真っ只中、第二次大戦の敗戦国主催の大会で、東洋初のオリンピック。
あの時代にこのような大会が開催されたことの意義を考えたいと思う。


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