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末次由紀の同名漫画の実写化作品。
競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を描く前後編二部作の後編。
前編である「上の句」が素晴らしい完成度で原作の世界を実写に落とし込んでいたけど、後編も本作も変わらぬ完成度で良くできている。
本作は「何故、かるたをやるのか」という自問が大きい部分を占めているので、スポコン的な青春部活映画だった前編と比べると内省的な場面の多い前半はちょっと勢いが落ちてしまうのだけど…まあ致し方なし。
物語を描く以上は動機面を掘り下げる必要もあるし、「個人戦でも団体戦の気持ち」という終盤にかかってくる助走部分なので重要だしね。
そのテーマの面では「上の句」では比較的影の薄かった新(真剣佑)の存在感が増えている。
祖父を亡くしてかるたをやめた新が、千早(広瀬すず)たち瑞沢高校かるた部のまっすぐに取り組む姿を見て涙するシーンは感動的だ。
(狙ってる感はあるけれど、こういう感情の揺れは悪くない。)
でも個人的にこの「下の句」で嬉しかったのは北央学園の扱いだなあ。
原作では彼らも彼らなりのドラマを持って存在しているキャラクターたちなのだけど、「上の句」ではかなりその要素はオミットされてタダの対戦相手の強豪校…、主将の須藤も単なる性格の悪い奴にw
この「下の句」では、ちょっとだけとはいえちゃんと彼らのことをフォローしていたのが良かったな。
さて、この後編ではクィーン・若宮詩暢(松岡茉優)が千早の向こうを張るライバルになるわけだけど、ちゃんと詩暢らしい「いけずな感じ」が出ていて面白い。
他のキャラクターと同じく、実写になってもイメージはちゃんと守られているし、かるたのシーンもクイーンらしい圧倒感が出ていて良いね。
劇中の原田先生をして「音のないかるた」と表現されるスタイルだが、他の人たちともちゃんと差別化されていたし。
そんなクィーンに撃沈された肉まんくん(矢本悠馬)の姿には笑ったw
彼はいいコメディリリーフだわ。
この映画では原作通り千早は詩暢には勝てないが、「勝ちたい、悔しい」よりも「楽しかったね」と言える千早の姿に、「何故、かるたをやるのか」の落としどころとしては気持ちのいい描写だと思った。
完結していない原作をもって映画としてまとめるのであれば、総じてこのまとめ方は良かったかな。
エピローグ的なシーンは、ある意味でイメージカットだけれど、もし続編が無ければこの締めで良い感じ。
ただ、続編製作が決まったと聞いてしまうと、ちょっと蛇足的な印象になってしまったのは勿体ない気もする。
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