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末次由紀の同名漫画の実写化作品。
競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を描く第三作。
前2部作が好評だったので公開中に製作が決まった続編だけど、不安だった蛇足感はなく、瑞沢高校競技かるた部3年間の締めの物語として上手くまとめてきたなと感心。
原作の要素を基に「この映画で何を描くか」という本質を作り手がちゃんと捉えているからこそ、瑞々しい青春も、部活を通したスポコン具合も、和歌そのものの魅力すらも絶妙なバランスで再構築できているのだろう。
対戦シーンでのギアの入れ方もスポコン映画のツボを押さえているのが気持ちいいですなあ。
新キャラは…花野さんはともかくとして、筑波くんのキャラが原作からだいぶ変わっていたけど、それでも話の中で役割がハッキリしているので好感。
最終対決は綿矢新が率いる福井代表で、その福井チームには新たに恋する(気の強そうな)映画オリジナルキャラがいたが、これはあくまで千早の対戦相手という役割以上のものにはなっていないか。
でも、新との「付き合って」「ごめん好きな子がいるんや」という掛け合いの繰り返しギャグは笑った。
何のことはないけれど、これだけでシリアスとギャグのテンポが良くなるのだから面白いな。
「31文字に込められた感情が千年後の人に伝わる」というフレーズが良い。
百人一首、和歌の魅力であると同時に、自分たちが後輩に伝えるものという瑞沢かるた部の想いを表現した通奏低音でもある。
平兼盛と壬生忠見の歌合は有名なエピソードだけれども、新入生・花野の片思いを大江さんが和歌のうんちくで解説しただけかと思ったら、終盤で運命戦のストーリーに絡めてくるとは…、いやはや全くよく出来ていると思う。
主人公の三角関係も、主人公にとってのクイーン戦も重要な要素ではあるが、この映画では団体戦をメインにしたことで劇中での決着は描かれない。
本作のプロット作成時はクイーン戦がクライマックスだったようだけど、これは今の形にしたのは良いセンスだと思う。
個人のストーリーは今後の原作で描き切られることだろうし、そもそも対戦チームの個人のドラマだってほぼオミットされているのだから、この映画では団体戦を通じた青春映画でまとめたからこそ気持ちが良いのだと思う。
その中でも個人にフォーカスをしたとすれば真島太一に関しての物語だが、前作での「青春全部かけてから言いなさい」という原田先生の言葉へのアンサーになっているのも感動を呼ぶ点か。
変人で名人の周防さんからの問いかけで走り出す太一が最後に団体戦に戻ってきた部分は、原作とは違って胸熱…であると同時に「ああちょっとできすぎ…」などとも思ったがw
それでもそういうケレンもまとめて本作の魅力だと思うな。
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